| <<前日の日記へ | 翌日の日記へ>> |
| 2004/3/26 |
 |
『ニシノユキヒコの恋と冒険』
著 者:川上弘美 出版社:新潮社
発行日:2003年11月 本体価格:1,400円
|
直接話したことはないけど、うわさではよく聞く人というのがいますよね。仕事は商社マンでルックス良し、いつもちがう女の子とつきあっていて、一向に落ち着く気配がない。かといって、そんなにクセのある性格でもないらしく、ひどい目にあったなんて話しはきかない。たぶんトラウマを抱えてて、女性となかなかうまくいかないんだろうね・・・物語を通して読者とニシノユキヒコの関係は、そのくらいの距離感が保たれています。
そんなニシノユキヒコについて語るたくさんの女性たちは、一人称で描かれとてもリアルです。いつも焦点があっているのが女性の心の動きのほうで、ニシノはそのむこうで、印象派の絵のように輪郭もぼんやりした姿で佇んでいるばかりです。私も途中からニシノのことはどうでもよくなり、性格も年齢も様々でありながらみんながみんな彼から去っていく、その心の動きに共感したり、反発したりしながら読んできました。読む人によって、心に残るエピソードがちがうと思いますが、私は「しんしん」というエピソードが好きです。
人は信じたいものを信じるといいます。感じること、思うことは言葉にしてしまうとそのとたん別の物になってしまう。生涯通してモテモテ君だったニシノユキヒコが本当は何を思って生きたのか、誰にもわかりません。誰もが自分以外の人間の本当の心がわからないことと同じように。 |
|
【楽天ブックススタッフ 真】 |
|