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読書日記 2004年3月31日更新
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2004/2/27
『春昼・春昼後刻』

著 者:泉鏡花
出版社:岩波書店
発行日:1987年04月
本体価格:400円
もうすぐ春ですね。何となく心が浮き立ちながらも、そこはかとなく切なくなる季節、それが春ではないでしょうか。そして桜の花が満開になり心的テンションは最高潮となるのですが、その直前までの、かすかに胸が高鳴りつつももの悲しいような、その微妙な感じが私は好きです。そんなうららかな春にとろりと酔いたいときは、この小説、『春昼・春昼後刻』。恍惚(と書いて「うっとり」と読む)となる幻覚作用が、たった137ページという薄い文庫本の中にしっかり仕込まれています!!

物語は、うららかでのどかな春の日から始まります。ほんの一瞬出逢っただけの男女(言葉もかわしておらず!)が互いに惹かれあい、それから不可思議な約束をかわすのですが、それが幻覚のような妄想のような夢のなかの出来事で…。「うたた寝に恋しき人を見てしより 夢てふものは頼みそめてき」という小野小町の和歌がテーマとなって、夢と現実、此岸と彼岸のあいだをゆらゆらと揺れながら、ラストは夢・彼岸という別世界へと昇華してゆく、美しくも切ない魂のお話です。…ってあらすじだけ書いていると何のことやらという気もするのですが、こんなに妖しいお話を美しく切ないなものにしてしまうのは、ひとえに文豪・泉鏡花の超絶技巧の文章のなせるワザ。何しろ私は、この小説が日本語で書かれた文章の最高峰!と思っているくらいです。旧式センスと言われるかもしれませんけど…(ちなみに本書は明治39年の作品)。

このお話の女主人公・玉脇みをは、大金持ちだけれど下司な男と結婚させられた、薄幸の美女(ま、時代は明治ですので…)。凛として品が良くて、恋も無常も知り抜いていながら情け深い、そんな女性。その彼女が、春の日の心持ちについて、感極まって言うことには、「〜(略)叱られて出る涙と慰められて出る涙とござんすのね。この春の日に出ますのは、その慰められて泣くんです。やっぱり悲しいんでしょうかねえ。おなじ寂しさでも、秋の暮れのは自然が寂しいので、春の日の寂しいのは、人が寂しいのではありませんか。〜(略)〜暖かい、優しい、柔らかな、すなおな風にさそわれて、たんぽぽの花が、ふっと、綿になって消えるように魂がなりそうなんですもの。極楽というものが、アノ確かに見えて、そして死んで行くのと同じ心持なんでしょう。 楽しいと知りつつも、情けない、心細い、頼りのない、悲しい事なんじゃありませんか。そして涙が出ますのは、悲しくって泣くんでしょうか、甘えて泣くんでしょうかねえ。」…とこのくらいで止めておきますが、この「楽しいけれど悲しい」混乱したわけのわからない気持ちの吐露は、更にえんえんと続きます。そしてその話にずっと耳を傾けていた男は、「茫然とした目の前へ、紅白粉の烈しい流が眩い日の光で渦巻いて、くるくると廻」る幻覚に襲われるほど、頭がくらくらとしてしまうのでした……。

ところでこの作品は、鈴木清順監督の映画『陽炎坐』の原案としても知られています(玉脇みを=大楠道代、彼女と恋に落ちる男=松田優作、という色っぽい配役でした)。泉鏡花の作品特有の混沌とした幻想性がよく表されていて、とっても好きな映画の一つです。けれどやはり、この小説の一番の味わいどころは、何と言っても泉鏡花の超絶技巧の文章!今時、文章を味わうなんて流行らないのかもしれませんが…、物語の筋とか、題材モチーフがもて囃される時代なのかもしれませんが…、いや、時代は関係ないのでしょうけど…、それでも敢えて主張したいのです。文章を味わいましょう!!と。そして『春昼・春昼後刻』は、こんな、詩のような文章で、幕。「渚の砂は、崩しても、積る、くぼめば、たまる、音もせぬ。ただ美しい骨が出る。貝の色は、日の紅、渚の雪、浪の緑。」

【楽天ブックススタッフ 寺】


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