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| 2003/4/28 |
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『桜宵』
著 者:北森鴻 出版社:講談社
発行日:2003年04月 本体価格:1,600円
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『花の下にて春死なむ』のビアバー香菜里屋とマスターの工藤さんが帰ってきました。このビアバー、度数の違うビールが各種置いてあってメニューに載らないような旬で美味しくてサプライズがたっぷり入った気の利いたお料理を出してくれるお店なのです。そして最大の特色はこの工藤さんが素晴らしい推理能力を持っているということ。常連客たちが話題にする数々の謎を時に温かく、時に厳しく解いていくのでした。『桜宵』というタイトルからも見て取れるように、情緒豊かに仕上がっているので推理もの臭さがありません。だからこの人の作品が好きなのかもしれません。
さて、私の気のせいかもしれませんけど新作はより料理描写が多かった気がします。「これはもしかして『美味しんぼ』か!?」と呟いてしまったほど…ただ、でもきっとこの工藤さんはどんな食材ででも人の心を癒せる料理を作ることができるんだろうなぁとしみじみ感じました。なかなか日常生活ではお目にかかることがないような珍しい料理法と素材の組み合わせ、それと、その料理を出してもらったお客さんの舌と目の純粋な驚きがダイレクトにこちらに響いてきます。これにはもう下手なガイドブックなど太刀打ち出来ませんね。工藤さんの創った料理と推理についでに料理の写真が添えられたりしたら食いしんぼにはたまらない本になりそうです。
本編の方は美味しさと共に少しばかりの毒が効いています。猟奇的な事件が起こったりすることはないのですが、人の生き死にに結びつくような悪意が根底に見え隠れしています。香菜里屋という場所で語られるものでなかったらものすごく後味の悪いお話になりそうです。当たり障りのないような仮面を付けて物語に登場してくる人が、内面にこんな闇を抱えているというのはかえって恐いことですね。そんな中で表題作の【桜宵】はきらびやかなほどに美しい景色の中で、切ない恋物語を描き上げていてとても心に残るものでした。快晴の桜吹雪の中でベンチに座って本を広げて読んでいたら雰囲気ありますよ、きっと。(自分が絵になるかどうかは別として)
料理は愛情だ。なんて良くいうけれど、やっぱり相手に対する思いやりが大事って事ですね。さて連休は腰を据えて料理でもしてみるか… |
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【楽天ブックススタッフ 瑞】 |
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