今年は伊坂幸太郎の年になる!以前から巷でささやかれていたそんな予感が確信に変わってしまうほど愉快な本でした。思えば『ラッシュ・ライフ』が出て、その見事なまでの騙し絵の描きっぷりに感銘したのがもう半年以上前の話。年末に『このミステリーがすごい!』の11位にランクインしたのが、ものすごーく嬉しかったのと同時に、「こんなことなら、私が“ラッシュ・ライフに一票入れよう運動をしたのに〜”」とあまり意味のない負け惜しみを感じたのも今となっては良い思い出です… 今回も彼が造り上げた登場人物は胸のすくような冒険活劇を見せてくれます。ほんとに愉快。
主人公の4人は、ふとしたきっかけから出会った銀行強盗4人組。絶対嘘を見破れる能力を持った成瀬・演説の名人の響野・スリの天才久遠・体内に恐ろしいくらい正確な時計を持つ雪子といった豪華なメンバー。この人達シンプルな銀行強盗を目指して、強盗に何度か成功している凄腕強盗なんですけど、今回はなぜか途中で別の強盗に有り金を強奪されてしまうのです。成功、裏切り、大どんでん返し、そしてまた新たなワルの登場…とハイテンポで進むストーリーはまるでオセロゲームのよう。白と黒が目まぐるしく入れ替わっていって、黒優勢かと思いきや、次のタイミングには以前置いた伏線と新しい一手が繋がって大逆転!そして最後に笑ったのは…?
まあとにかく読み始めたら息つく暇もありません。伊坂さんらしいシニカルな会話も見逃せないところ。色々な知識が至るところで披露されているんですが、それがくどくどと語られすぎないところがこれまた美しいところです。理屈っぽい事が嫌いな人でもこれくらいなら許せそう。人間関係に悩んだり、子どもの教育に悩んだり、犯人だって色々悩みを抱えてるんです(笑)章の始めに辞書のようなイメージの記述があるんですが、これが単なる辞書と大違い。思わずくくっと笑ってしまうようなブラックユーモアがたっぷり。「辞書かぁ」なんて見逃したら損しますよ。
ひとつ残念だったのが、幸か不幸かどことなく時代劇的な安心感が漂ってしまっていて「今度もまた最後は上手く収束してくれちゃうんだろな。」と思ってしまえること。ま、でもこの興奮の前には欠点にすらなりませんね。きっと伊坂幸太郎という人は、出てくる人が多ければ多いほど面白いプロットを組み立ててくれる人なのだと、今回しみじみ思いました。よーしそろそろ大ブレイクしてくれい!! |