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| 2003/2/21 |
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『いつもなら泣かないのに』
著 者:吉元由美 出版社:大和書房
発行日:2002年09月 本体価格:1,400円
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心の調子があまりすぐれないときに、この本を手にしました。眠れないときに睡眠薬の助けを借りるように、というとちょっと違うかもしれませんが、タイトルとブルーのきれいな装丁を見て、「泣かせてください」と救いを求めるような気分でした。
「大好きだった。けれど、淋しくてたまらなかった。もっと愛されたかった。二人でしあわせになりたかった。かぎりなく優しく、かぎりなくせつない、6篇の恋愛小説」という、「せつない」物語でした。人の気持ちというのは、とくに「好き」とかそんなふわふわとやわらかい気持ちは、そもそも観測不能なのだと思います。「好き?」と聞いた瞬間に、その言葉が相手に届くこと自身が、相手の心を揺さぶってしまう。「こいつ、オレのこと好きなのか?」「心配そうに聞いてるから、安心させるような答えをしとこうか」。そして出てきた答えが、相手の心を本当に映しているものなのか、そんなことは、答えた本人にも、ましてや聞いたほうにも、全然知り得ないものではないか、と。だから、何か形になるものをほしがったり、いつも何か確かめていたくなったり、それでもやっぱり不安になったり。
読んでいてそんなことを思い起こしました。この場面でこう言っていれば、本当の気持ちを伝えていれば、どうなっていただろう。口ではこう言ってるけど、本当は愛しているはずなのに。向かい合って座って、二人の心の中をテーブルの上に取り出して並べてしまえば、何か違った結論が出るんじゃないかと、主人公の女性たちのせつない恋には、そんな歯がゆい思いさえします。でもやっぱり、テーブルに並べたところで、ほんとに鍵になる想いを、一つだけポケットの中に入れたままにしていたりして、それを伝えないことが優しさなのか、それとも、不実なのか。いい悪いではなく、単にどちらの道をその瞬間に選択したか、というだけのことなのでしょう。
「しあわせになりたいと心から願う、その力によって、彼女たちが、そして私たち自身が、傷つきながらも再び自らの足で歩き出すことができるよう、心から願いながら」とあとがきにありました。せつない物語ですが、どれも、主人公たちはかすかかもしれないけれど明かりの差す明日に向かっているようです。泣くための共感をこの本に求めるのではなく、そこから立ち直って、顔を上げて前を向く力を、6人の女性たちから受け取ることにします。 |
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【楽天スタッフ 笑】 |
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