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| 2003/2/18 |
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『交渉人』
著 者:五十嵐貴久 出版社:新潮社
発行日:2003年01月 本体価格:1,700円
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久しぶりに本に夢中になって電車を乗り過ごしました。クライマックスシーンになると意図的に乗り越す事もままあるのですが、まさか中盤でそんなことになろうとは…我を忘れてしまうくらい、凄腕ネゴシエーターの駆け引きの技術は魅力的なものでした。まあ、このFBI仕込みの交渉人、石田警視正が好みのタイプだったことも否定できませんが。
ありきたりのコンビニ強盗、逃走経路にあった病院への立て籠もり。粗暴で短絡的な犯人たち…と、どこか変わりばえのない事件が組み立てられていきます。病院を野次馬たちが取り囲み、サーチライトで煌々と照らされ、そして周囲には赤色灯をともしたパトカーと警官の群れ…そんな典型的(だと思っていた)立て籠もり現場が、ネゴシエーターの出現によってまったく違ったものになっていくさまが見事です。拡声器は携帯電話(それもちゃんと盗聴機能付き)に姿を変えて、やかましい周囲の様相は静寂へと変わっていくのです。電話を通じて交渉がなされるたび手に汗をかかされるのですが、それでも石田警視正は冷静さを欠くことはありません。石田を信じて作戦通り進んでいけば問題ない!大丈夫!石田万歳!石田さんステキ!という現場の雰囲気を一緒になって味わいながら犯人を追い詰めていけました。病人達を人質にとった事件の性質上、重病患者の様子が気にかかります。しかし、順調なスピードで人質の大半が解放されます。しかし、そのあたりから突如風向きも変わり始めます。死体がいくつか発見されるのです…
そうそう、以前特殊捜査班で石田の指導をみっちりと受けていた遠野麻衣子の存在も忘れてはなりませんでしたね。彼女は優秀なキャリアなのですが、当時石田との不倫疑惑をたてられて所轄の経理課に異動になったという不遇の経歴の持ち主でした。石田は自分の現場到着前までのピンチヒッターに、自分が手塩にかけて育てた麻衣子を選びます。彼女は今も変わらず密かな思いを寄せている石田のために代役を見事に務め、石田到着後も彼の補佐を務めるのです。恋心がまじった彼女の視点があるからこそ、より石田の活躍が光ったのでしょう。そして最後の最後には彼女ならではの活躍も見せてくれるのでこれがまたたまりません。
捜査現場側の表情ややりとりがくっきり伝わってきた一方で、事件現場の描写があまりなかったため立て籠もり事件としてのリアリティーがちょびっと足りなかったかなと感じました。最後まで読んでみると「それも戦略かな」と思ったりもしますけどね。あと、残念だったのがもう一点あったんですが、まあそれは読んでみての判断としてください。(っていって在庫を見たら品切れになってますな。新潮社さん!刷ってください〜) |
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【楽天ブックススタッフ 瑞】 |
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