女性の使う言葉で最も頻度が高い言葉といえば、「カワイイ」じゃないでしょうか。私は女性なので確信を持って言うのですが、まさにありとあらゆる場面でカワイイを使います。一般的には、キレイだとかセンスが良いというような美的な状態を意味しますが、その他に、その対象が小さかったり弱かったり可哀相だったり無防備だったり無力だったりして、思わず情けをかけてあげたくなるような状態を表すときにも、女性はカワイイを使います。女の子が情けない男の人に対して何くれと世話を焼いてあげて、「私がいないとダメなのよ」なんていうことが実際起こったりするのもこのカワイイ効果のためです(笑)。それから、役所や薬局やその他多くの場所で赤ちゃん系二頭身キャラが採用され、女子がその人形やストラップなぞを買い求めたりするのもこのためです。
そんな女子限定カワイイ感覚に砂糖とピンクの着色料を入れてたっぷり泡立ててそのまま放っておいたらいつの間にか腐っちゃったけどポチポチ生えたカビが水玉みたいで何だかカワイイ★なマンガが、水野純子の作品です。とにかく登場する女の子がみんなロリロリしててカワイイ!!髪は膝まで長くて、睫毛バチバチお目々キラキラで、洋服もリボンやらフリルやらお花でいっぱい。しかし侮ってはいけません。彼女たちの身体は恐ろしいまでにナイスバディで、格好も意味無くコスプレ。彼女たちに倫理観や道徳などなく、何故かフツウにトップレスです。ナースのときは患者を的にして注射器ダーツをしたり、ラーメン屋勤務のときはウサギの店長の腕を切り落としチャーシュー代わりにしてクビになったり、今度は自分がラーメンのだしになったりします(賃金は1回1000円だそうです)。錬金術師になったときは、自分を慕う男の子を毒薬の実験台にして彼の体が花柄になり手が何本も生えてきました。が、このへんで止めておきます…。
あぁ悪趣味マンガってやつね、そう思った方もいらっしゃるかもしれません。確かにそうです。残酷でグロテスクでエロティックで、悪趣味。けれどそれにもまして…カワイイ。とにかくカワイイんです!カワイくて悪趣味(並列)、じゃなくて、悪趣味それ自体がカワイイ(同列)のです。女子の感覚では、舞台設定や主人公やアイテムがカワイければ、悪趣味さえもカワイイ傘下に入ることを余儀なくされます(勿論、そう思わない人もいると思いますが)。もちろんそれには、高レベルな技術とセンスが必須だということは言うまでもありません。だけどそういう条件が整えば、悪趣味はカワイイに転化し得る。いや、カワイイに侵食されるのです。
カワイイは、怪物のように何でも飲み込んでいきます。美的な状態、それから情けない無力な状態、そして悪趣味な状態まで。今や、カワイイは新しい美意識を表す言葉として高い地位を獲得しつつあります!日本人の美意識の流れとして、古代は「あはれ」、中世は「幽玄」「わび・さび」、近世は「粋・すい」と移り変わってきましたが、現代は「カワイイ」の時代。そんな仮説をたててみましたが、いかがでしょうか? でも役所や企業などがこぞって赤ちゃん系二頭身キャラをイメージキャラクターとして採用しているのを見ると、それもあながち間違っていないのでは…と思わなくもないのです。個人的には「粋」の美意識に心酔している私ですが、やはり私も現代の女子。カワイイものをついつい買ってしまっては、幾つになったらカワイイ趣味から卒業できるのかしら、と思うこともしばしばです。でもこれって年齢の問題じゃないのかも。これって現代に生きる女子の宿命なのね…と、水野純子マンガを読みつつ気づかされたのでした。 |