世はどうやら空前の讃岐うどんブームなんだそうだ。そういわれてみたら、恵比寿駅のうどん屋さんには行列が出来てましたね…さらには讃岐うどんの聖地巡りなんてのも流行ってるそうです。この状況下でこの本を読んだら、何人かはこの舞台になっている「池袋の某デパートの屋上」にあるさくら婆ぁのやっているうどんスタンド探しに飛んでいってしまうかもしれません。それくらいうどんを食べたくなる小説でした。(よりによって著者近影で北森さんがうどんを食べてるもんだからより一層気になるし…)
このうどんスタンドを切り盛りするさくら婆ァが主人公となって、デパートで起きるあれやこれやの事件の謎解きをしていく連作短編集です。華やかな場所なようでいて、どこかうら寂しさが拭いきれないという場の雰囲気をとても良く醸し出していました。語り手に屋上の無機物を起用したところがユニークです。下手な人がこれをやるとイライラするばっかりで読んでいられない代物になっちゃうんだけど、さすが北森さん。動けない、話せないお稲荷さんの狐のもどかしさや、流れ流れて屋上にたどり着いたピンボールマシンが語るノスタルジーなど章ごとにぴったりの語り口を用意してくれています。
さくらさんを始めとし、興行師(かなり裏世界に通じてる)の杜田や高校生のタクなどが活き活きと活躍します。しかし、どことなくユーモラスなやりとりの奥で、解かれる謎はかなり重いものが多いのです。ハッキリ言って“暗い!”ハッピーエンドに安心感をおぼえる私にはこの救いのなさはちょっと辛かった…暗さのもとには、さくらさんと杜田が背負った過去もあるのですが、このエピソードがさらっと流されちゃったのがちょっと不満でした。それでも読後感が悪くならないのが不思議です。登場人物たちの幸せは、私が勝手に想像することにしましょう。
本格的な謎解きを求めて読むと、物足りないかもしれないけれど、人のココロというものを存分に味わうことの出来た作品でした。連作短編といいながらも、繋がっているのは登場人物だけ…という短編をよく見かけるなかで、絡み合った知恵の輪がエンディングに向けて着実にほぐれていくような展開を見るのが嬉しかったです。とりあえず、うどん屋さん探しに行ってこよーっと。 |