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読書日記 2004年3月31日更新
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2003/1/17
『ピーター・パン新版』

著 者:ジェームズ・マシュー・バリ/厨川圭子
出版社:岩波書店
発行日:2000年11月
本体価格:760円
『ピーター・パン』に、はまってしまい動きがとれません。気がつけばフック船長のことを考えています(いや、それほどでもないか)。ピーター・パン生誕100年ということで、かつてのディズニーアニメの続編である『ピーター・パン2』も公開されました。そういえば、ちゃんと原作を読んでなかったなあ、これもまた話題の英国ファンタジーの古典だし、と思い、手にとったところ、あらら、すっかり、その世界に夢中になってしまいました。大人が読んでも、充分に楽しめる作品なのです。いくつかの翻訳版があり、ちいさな子ども向けのリライトや、アニメのノベライズなど、かなりの数に及ぶのですが、興味がわいて、色々と手にとってみました。本書は原点である『ケンジントン公園のピーター・パン』ではなく、一般的に「ピーター・パン」の物語として知られている『ピーターとウェンディ』の翻訳です。

この物語に登場する著名な海賊、フック船長は、欲深な腹黒い人物のように思われがちですが、バリの原作では、もう少し含みのある人物造形がなされています。無論、現象面では、ピーターに毒を盛ったり、ウェンディをかどあかしたりと、いたって海賊的に振舞うわけですが、その裏側にある心性には、かなり惹かれるところがあります。例えば、彼の「孤独」について。海賊の頭目として、沢山の子分たちに囲まれながらも、フック船長の孤独は癒されることがなく、むしろ、それを深めていくのは、彼があまりにも海賊らしからぬ考えを持っているからなのです。粗野な海賊の子分たちとは育ちが違いすぎる。自然と身についているその高貴さ。どうして「海賊」という特殊な進路を選ぶこととなったのかわかりませんが、実は、フック船長はイギリスの伝統ある名門校に通っていました(しかも名家の出身のようです)。そして海賊となった今でも、「学校的な美徳」の呪縛から逃れることができないのです。「行儀」というものを、まず彼は第一に考えます(翻訳によっては「エチケット」であったり、「礼儀作法」であったりするのですが、その名門校の出身者にふさわしい紳士としてのたしなみということでしょう)。随分と堕落してしまったものの、心の底では「行儀よくあらねばならない」という不文律を信奉しており、それが、海賊となった今も、彼を苦しめています。果たして自分は「行儀」にかなう人間であるのかどうか。海賊としての名声も、こうした学校的価値観の前には脆くも崩れ去り、ちっぽけな自分自身に冷や汗を流し続けます。やがて彼は「行儀」を意識するあまり、「行儀」に無自覚なほど「行儀」に適うのではないか、との結論に達するのですが、こうした「意識しないこと」を「意識する」ことも「意識する」ことだからそれもダメ、といったようなグルグルの堂々巡りは、人間を病的にしていきます。真面目な人ほど精神的ストレスを溜め込みやすいと聞きますが、フック船長はこうした問題を考え込むあまり、かなり危険な心の状態になってしまったようです。彼は、いつか「自分が破滅する」ことを予感しています。どこかにそんな諦念をいだいた風がある。恐らく彼は、宿敵ピーター・パンを倒すことよりも、自らの悲劇的な死によって「運命と和解」することを欲していたではないか、と勝手に想像しています。その片腕をピーターに切り落とされた後に取り付けた、鉤の義手こそが自分にとっての誇らしいもので、生身の片腕を見下したりすることにもまた、どこか屈折した気持ちの翳りを感じます。とはいえ、内面の不安定さと動揺をよそに、いたってスマートでクールな立居振舞い(それでこそ「大人」というもの)。ピーターとの最終対決、その断末魔に、少年時代の記憶が彼の頭の中を駆け巡ります。子どもVS大人の対立図式では、悪い大人代表のようなフック船長ではあるのですが、ある意味、「子ども心」を忘れない人であったのだと。そして、子ども時代に解決できなかった心の問題を抱えたまま大人になってしまった人間の、哀しい結末に、なんだか切なくなるのです。ほめられたいのにほめられなかったのだろうか。愛情もなく、ただ厳しく躾られて育ったのだろうか。そんなことを、つい考えてしまいます。海賊になってしまったことにもきっと複雑な理由があるのでしょうね。目の前のことよりも、なんだかいつも遠くを見つめているような人で、可哀相なんだけれども、ちょっと良いな、と思ってしまいました。感情移入しすぎですね。

意識過剰なフック船長の対極、無自覚、といえばピーター・パンですが、彼も、原作ではかなり甚だしいキャラクターで、子ども的な気まぐれとデタラメで行動しています。分別ないし。彼を取り巻く女性二人(ウェンディーとティンカーベル)が熾烈な嫉妬合戦を繰り広げているのにも全然、気がつかないし。そもそも彼にとって「女性」という存在は「お母さん」でしかないので、女性陣の気持ちとは、当然、すれ違います。どうだろう、こういう男って。いや永遠の少年は「男性」ではないのか。さらにいえば、正義の使者、というわけでもなく、ただのやんちゃな子どもなので、結構、冷淡で残酷なところもあったりします。フック船長は、ウェンディーをレディとして遇して、ちゃんとエスコートするのですよ。私は断然フック派です。子どもの頃にこの作品を読まれた方も沢山いらっしゃるかと思いますが、是非、再度、コンプレックスを抱えたクールな悪役(ヒール)の香気に触れていただきたいと願っております。大人として。
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