よりによって、こういうのを読んじゃった時にかぎって“日本海に不審船!”とかタイムリーなニュースが流れてきます。今まで人ごとのようにとらえていた脅威がものすごい身近なものになったことを、そのニュースを見て感じました。ビクビク。
そもそもこれに興味を持ったのは、「映画の試写会で描かれた事実のあまりの衝撃に皆が色を失った…」という話題を読んだときでした。不審な潜水艦が見つかったことで右往左往する政府首脳陣。武器を持ってもいいのか?自衛隊が出場してもいいのか?逃げ出したといわれる工作員を殺してもいいのか?答えが出ないままに、対戦車ロケット砲を持った十数人の工作員の前に死体の山が積み上がっていきます。脅える地元民と、変わらぬ生活を続ける都市生活者…その対比がまた何ともいえません。
この本に圧倒的なリアリズムが備わっているのは、ほとんど感傷が入っていないからなのだと思います。テーマ的には酷似した『亡国のイージス』(これは泣けます)が夕日を眺めて涙する物語だとしたら、こちらの中では客観的に淡々とその様子のみが語られるのです。視点はほぼノンフィクション、余計恐怖が増幅します。どんな武器を持っているかまだハッキリしなかった頃、工作員の探索のため山に入った陸上自衛隊員の通信が印象的でした。「あ、向こうに何か見えます、筒のようなモノを持ってます…」(原文とは違ってます)といった会話は瞬間でとぎれて、次に描かれるのは飛び散った肉片。出てくる人物たちの顔が見えてこないのが、かえって組織の不気味さを強調しています。
笑えない話なんですけど、この発端になっている情報流出には防衛庁のお偉方の浮気が起因しているんです。妻と別れて若い彼女と一緒になろうかと苦悩している彼はそんな事つゆ知らず…なんだか情けなくて可哀想でした。日本列島がひっくり返るくらいの謀略をどう収束させるのかと思ったら、これまた衝撃的な結末が待っています。上手いといえば上手いんですが、ちょびっと物足りなかったかな。
とにかく、国際謀略モノをあまり好きではない私でもこれはすいすい読めました。ニュースの見方が変わります! |