| <<前日の日記へ | 翌日の日記へ>> |
| 2002/8/19 |
 |
『海辺のカフカ (上)』
著 者:村上春樹 出版社:新潮社
発行日:2002年09月 本体価格:1,600円
|
この仕事のいいところは、たまに発売前の本を読めたりすることです。でも当社には読んだからには「書け」という無言のおきてがあります。本当はもう少し、時間を置いて自分の中で熟成させてから書きたい類の本なのですが、なんとか書いてみようと思います。ネタバレはないのでご安心ください。
村上春樹の作品は出すたびに話題になり、ベストセラーになります。話題になるから予備知識がいやでもはいってきて、知らず知らずに「こう読めばいいんだ」という方向性が示されていて、自分にとって大事な部分を読み過ごしてしまっていたかもしれません。今回はほとんどそれがなく、まっさらな状態で向かい合えたのはラッキーでした。
『海辺のカフカ』は美しい音楽のような物語でした。さまざまな楽器がそれぞれのパートから静かに始まって、突然ドラマティックになったり静かになったり、微妙にコードを変えながら最後にひとつの旋律を奏でながらクライマックスへ一気に流れ込んでいきます。メタファーの海に漂いながら、だまし絵の中に隠されているもうひとつの絵を探して未知の世界に踏み込んで行くような読書を、久しぶりに楽しみました。
正直、私はあまりこれまでの作品を全部は読んでいないので他の作品と比べてああだこうだ言える立場にないのですが、繰り返し浮かぶのは『ねじまき鳥』のようなフィクションではなく『アンダーグラウンド』などのノンフィクションを読んだときに感じた底なしの闇のようなイメージです。世界は何重もの層でできていて、それぞれの「層」でそれぞれの物語が進行しているけれど、私に見えているのはほんの表層の部分でしかない・・・というイメージです。それは怖くもあり、興味をそそられることでもあります。
この作品も魅力的な登場人物がでてきます。とにかく私は猫探しの「ナカタさん」に心を奪われてしまいました。この人がひどい目にあわなければいいと、もう心配で心配でたまりませんでした。この人のことはずっと忘れられないでしょう。
これからおそらくいろんな人がこの作品について語るのでしょう。いろんな情報を得た上でもう一度読んでみようと思います。もちろん、こんどはちゃんと自分で買います。 |
|
【楽天ブックススタッフ 真】 |
|