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読書日記 2004年3月31日更新
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2002/7/9
『エミリー』

著 者:嶽本野ばら
出版社:集英社
発行日:2002年04月
本体価格:1,200円
嶽本野ばらの恋愛短編集です。中には表題作の他【レディメイド】【コルセット】と3本の短編が入っています。なのですが、私は2番目の作品【コルセット】にいたく衝撃と感銘を受けてしまって、他の印象がすっ飛んでしまいました。だからこの感想は【コルセット】という短編の感想だと思ってください。

“僕”は死のう死のうと想い続ける27歳の男性です。別に何か辛いことがあるわけではなくて、ただただ漠然とこの世を生きることがイヤになったからという理由。それは当時仲良しだった希彌子が30歳の若さにしてふと自殺してしまったことに起因しているのからかもしれません。とにかくそんなわけで大いなる虚無感にとらわれた僕は、鬱病の診断を受け病院に通います。こんな厭世観を持った人がちゃんと医者に何か通うのか・・?と思うでしょうが、彼の目的はいつしかその病院の受付にすわる女性の笑顔を享受することにうつっていくのです。

そうこうするうちに、前述の希彌子さんが亡くなった30歳という年になった“僕”はまたまたふと死を決意します。そして死ぬ気になればなんでも出来ると、お寿司やさんにいって、カニ味噌とウニばかり頼んで満腹するまで食べることをやってみたりするのです。さらに彼がやった大胆な試みが死のうと決めた直前の日彼女をデートに誘うことでした。ダメもとで「引っ越す前の最後の機会だから・・」と理由を付けて彼女を誘い思いがけず成功!この一日で二つの魂は不思議な交流を始めることになりました。別れ際、驚くべきことには彼女の方から再度逢いたいという申し出を受けます。「それでは食事でも。」と翌日再び逢うことを約束した二人、恋情をほとばしらせたのは彼女の方でした。ところが彼女は二週間後結婚を控えていて…

というストーリー。ネタバレになってしまうためこれ以上書けないのが辛いです。ここから二人の愛は山場にさしかかるのですが…。結婚とか周囲の人間関係とか、すでに予約してしまった結婚式場とか人はいろいろなしがらみの中で生きていて、それを彼女は「“コルセット”みたい」と表現します。でもそんな拘束があるから気づく愛もあるのだねと二人で冷静に話し合う姿が興味深かったです。そうはいっても魂までは拘束できません、この本を読む限り。そして恋は病んだ精神にも特効薬になるんですね。そういうことをつらつらと考えさせられる作品です。

嶽本野ばらさんの作品はどれもこれもカフェーで(太陽の当らないところ)ゆったりとカフェオレとか(アイスは似合わない)を飲みながら楽しむのがいいようです。私のように混雑した通勤電車で読んだりするとすっかり会社で仕事をする気分が失せて、主人公のように厭世観にとらわれてしまったりするので要注意。嗚呼。
【楽天ブックススタッフ 瑞】


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