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| 2002/7/5 |
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『囁く谺』
著 者:ミネット・ウォルターズ/成川裕子 出版社:東京創元社
発行日:2002年04月 本体価格:1,100円
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女性ひとり暮らしの家のガレージで、ホームレスが餓死していた。目の前にはたっぷり食料が入った冷凍庫もあったのに…という謎から物語が始まります。それから六ヶ月後、もう世の中が事件に興味をなくしはじめた頃、雑誌記者のマイケルはその家を訪れその死が“自殺”であったと聞きます。そしてまた女主人、ミセスパウエルがホームレスに対して並ならぬ興味を示している事に不可解な念をおぼえるのでした。この事態に興味を持ったマイケルは、ホームレスの素性調査を始めます。もともと60歳をこえていると周囲の人間に思われていた年齢がそれよりもはるかに若い40代であったことや、時々行う懺悔の振る舞いを聞くにつれてなにか大きな謎があるのでは…と次第に事件の闇が濃くなっていくのです。
変な先入観を与えるとまずいのですがとにかくややこしい厄介な小説でした。マイケルの素性さがしのあいだに、失踪者の記事が差し込まれ、さらには南アフリカケープタウンで挙動不審な振る舞いをする女性の話まで披露され、もう何がなんだかわかりません。「もしかしたら、本当に脱線してるんじゃなかろうか…」と思ってしまったことも。しかしそういった伏線が最終的には絡み合ってきっちり型にはまっていくのです。さらにさらに想像を超える事件の背景がひょんなところで明かされたりと「えーい、長いから結末だけ読んじゃえ。」という姑息な手段が使えないお話になっています。
でも、結構長いので最初の方にはられたヒントの事はおぼえていられず、結局重要なところをもう一度読み直しました。それでようやくいろんな事に納得。
事件もさることながら人間模様もかなり楽しめます。主人公のマイケルはバツニの40代男性、そんな若かりし頃のわだかまりが深いままなので家族との交流もありません。彼が調査段階で出会ったストリート・キッズのテリーや80代のユダヤ人弁護士ローレンス、写真オタクの30男バリーとのあいだに芽生える奇妙な友情と、その関係の中で成長していく人物たちというのも非常に良く書かれていました。(だからこんなに長いのね・・)
冒頭部分から話が拡散するので、抵抗感がある方も多いのではないかと思います。でも、最後まで頑張って読んでよかった。途中で結末だけ読まなくてよかった・・と思える作品でした。ぜひともこの憎らしく見えるけれど憎めない4人組にまた登場してほしいですね。 |
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【楽天ブックススタッフ 瑞】 |
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