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| 2002/7/1 |
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『狂王の庭』
著 者:小池真理子 出版社:角川書店
発行日:2002年06月 本体価格:1,700円
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慎ましやかな人妻の杳子、彼女を全身全霊をかけて愛した男陣内青爾は、妹の婚約者でした。
こう聞いただけで、禁断の世界を垣間見た気がします。陣内は紡績会社の青年社長でありながら、全く実業には興味を示さず、狂ったように西洋庭園を造ることにその情熱を傾けていたのでした。杳子に捧げるために作られたその庭は彼らの烈しくもせつない恋の舞台となっていくのです。
小池さんの小説には珍しいことではありませんが、登場人物たちはすべて上流階級の人々です。そして時代は昭和20年代…まだ息詰まる風習が多分に残っている時代だからこそ、ふたりの関係は重苦しく、そして逢引きをしている瞬間はよりときめいて見えてきます。携帯電話が普及した時代を舞台にしたらなりたたない恋愛小説は多そうだなぁとあらためて思ってみたり。
ふたりの恋は密やかです。妹の美夜は青爾が実の姉を愛していることに気づいていたようですし、逢引きの協力者がいたりもしたわけなのですが、口うるさい周囲には全く感づかれることもなく狂ったような恋の日々を送るのです。最初は青爾の想いを受け止めあぐねていた杳子も、ダムが決壊するように自らの情熱をほとぼらし青爾に身を任せます。「青爾が妹と結婚したらこの関係にも終止符を打たなければならない…妹がこの家の、この庭の主になるその日まで。」かすかに残った理性でそんな言い訳をしながらも、残された恋の日々を想い求めあうふたり。あぁこう書いているだけでもクラクラしてきました。ストレートな肉体関係の描写があるわけではないのです。なのに視線が絡み合うのを想像するだけでエロティック。やっぱり小池真理子って凄いなぁ。
タイトルになっている狂王とはバイエルンのルードヴィッヒ二世のことです。分裂、狂乱、過剰な情熱と厭世観、そして病める魂。青爾はまさしく彼そのものです。そんな彼にこたえるために周囲の人との関係が少しずつ歪んでいくさまは恋愛小説を通り越してサスペンスの域に入っていました。
恋は人を狂わすもの。自らを狂気に落とすことで杳子への愛を証明しようとする青爾に対して、杳子の心にどこか存在しつづける冷静さの対比が非常に印象的です。やっぱり女ってしたたかなのかなぁ・・・
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