この本、以前にも【知】さんが読書日記に登場させていて、そこで詳しくあらすじなどを書いてくれているので、今回は割愛します。本当はその時に読みたいなぁと思っていたんですけど、結局読むまで1年もかかってしまいました。時の経つのは早いものです。
ストーリーは、ポーリィの記憶が混乱するところから始まります。自分の中にある“もうひとつの記憶”そして周囲の人々の記憶からも消えていたリンさんという男性の存在…はてさてその真相はいかに?
オビにハリー・ポッターの源流と書いてあることからもわかるようにジャンルを問われればファンタジーです。しかし至って普通の生活風景から物語が始まってしまうため、「いったいどこがファンタジーなんじゃ」とつぶやくことしばしば。どちらかというと少女の成長物語として読んだほうが適切なんじゃないか?と???ばかりの読書が佳境にさしかかったとき、ようやく目の前の霞がとれて全体に張り巡らされた仕掛けというか伏線がいきなり浮かび上がってくるのです。ところが「おぉこれは確かにファンタジーだ!」と膝を叩く暇もなく話が終わります。(もちろん、きっちりとした決着はついています)なんだか釈然とせず、後味がすっきりしない。仕方がないのでもう一度パラパラ読み直してみるといろいろな事が見えてきます、そしてやっぱり面白い。そういう本なので気の短い方には向かないかもしれません。私もちょっと苛々しました。
本に隠された伏線が深いのは、中で語られる本の内容そのものが伏線になっているふしがある点です。少女の成長の側には必ず本があって、それはかのリンさんから贈られたものだったり司書が薦めてくれたものだったりと様々です。『ライオンと魔女』とか『三銃士』とか名作という名作がぞろぞろ並んだ様は本好きの方だったらたまらないでしょうね。ちなみにポーリィは10代の前半に『指輪物語』を読破しているのですよ、私なんて1巻をあんなに行ったり来たりしてたのに。
ファンタジーという観点もさることながら、ちょっとほろ苦くパステルトーンのラブストーリーという点を好きになりました。リンさんと出会ったときはポーリィは10歳の少女、そしてリンさんは立派なチェロ弾きの青年だったわけですが、精神的な交流を経て互いの存在の重みに気づいていくその過程は『あしながおじさん』を思い出させられました。このダイアナ・ウィン・ジョーンズという作家、来年には『魔法使いハウルと火の悪魔』がスタジオジブリで映画化されることも決まっているようです。こちらも近いうちに読んでみようと思います。 |