以前マガジンハウスから刊行されていた『謎のギャラリー』シリーズが編集変えされ文庫として発売されました。今回はテーマ別になっているので、より面白いアンソロジーになっている気がします。本当ならば北村薫さんの書き下ろし新作を読みたいところですが、まあその空気に触れられるだけでも幸せかと思いこの“愛の部屋”を手にとっています。アンソロジーのよさは、必死になってイッキ読みしなくてもいいところ。他の本を読みながらボチボチと読みすすめました。実はすでにマガジンハウス版を持っていて、全部読んでいるのです。でも嬉しいことにちゃんと新入り作品がある、そしてまた昔読んだ話も編集が変わったことで別の見方が出来る(記憶力が悪いだけ?)…珠玉のひとときを過ごさせていただきました。
新入り作品の中で最も心を惹かれたのが「ミス・レディー」というお話。大変短いお話なのでストーリーを語るのは差し控えますが、女の子はいつだってこういう男性を捜し求めていて、もしかしたらそういう人に一生出会わないことが幸せなのかもしれないなぁ…と感じてしまう作品です。それから前にも読んだけど「獅子の爪」。“どんなに離れても、あなたとは一緒になれなくても、私の心は常にあなたのもとにあるのよ”系の話で、ぐっときました。主人公のロシア女性が奔放なしぐさをいくつか見せるのですが、なぜかそこに妙に色気を感じます。特に牛乳を飲むシーンなんてうまいなぁ…夏目漱石の『それから』の一番好きなシーンが三千代が花瓶から水を飲むシーンなのです、素に戻った女性の仕草に作り物でない色気を感じるのは私だけでしょうか?
そうはいってもこのアンソロジーの白眉は巻末の北村薫×宮部みゆき対談です。収録された作品を語っていくそのまなざしと洞察にはため息さえでるほど。特にどちらも大好きな作家なので、もうその空気を身近に感じられるだけで幸せな気分に浸れます。対談の終わりに(2001年11月 神楽坂にて)と書いてあるのを勝手に拡大解釈して「どこの料亭で、どんなお酒を飲みながら語ってるんだろうか?」と妄想は限りなく広がって…
それはともかくとして、よく言われる事ですが好きな作家が好きだという本は大概外れないと言います。北村薫ファンは必見! |