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| 2002/4/9 |
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『天切り松闇がたり(第3巻) 初湯千両』
著 者:浅田次郎 出版社:集英社
発行日:2002年02月 本体価格:1,500円
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腕のいい盗賊というものは魔法使いのようです。さらに義賊とくれば庶民としては味方をせずにはいられない…子どもの頃、アルセーヌ・ルパンに夢中になった私の心をとらえて離さない大正時代の盗賊たちの物語。ついに最終回になってしまいました。あぁ残念。
このシリーズは、“天切り松”と呼ばれた伝説の盗賊村田松蔵が留置場で看守や留置されている罪人たちを相手に昔話を語っていく形で物語が進行します。松蔵が闇語りをするとなれば、聞き逃すまいと仕事の手を止めて集まってくる警察の人々、挙げ句の果てには署長を呼びに家まで行ってしまうというのだからすごい。みんなが真剣に聞き惚れる話は大正時代の世を駆け抜けた目細の安吉一家の活躍談です。二千人の手下を束ねていた仕立屋銀次の一の弟子、安吉をはじめとして、振り袖おこん・黄不動の栄治・百面相の書生常・説教寅がそのファミリー。彼らが活躍した時代を松蔵は子供心にしっかりと焼き付けていて、ちゃちな犯罪者がはびこる現代を憂いながら本当の侠気を語ってくれるのです。
一家のやった盗みは桁違い。山県有朋の懐から金時計をくすねたり(これは前作でのお話)国宝級の刀をニセモノとすり替えたり、かと思うと宮様のお名前を語った大がかりな詐欺をやったり…と聞いた庶民が拍手喝采を贈ってしまう剛毅なものばかり。良いことではないのだけれど、裏には人情と純情があるのでついついホロリとさせられてしまいます。今回も「大楠公の太刀」と「道化の恋文」には泣かせられちゃったなぁ。しかし何と言っても、今回の目玉は「銀次蔭盃」でしょう。そもそも安吉はきちんとした仕立屋一家の跡目となっていなくて、いろいろわだかまりがあるのです。親を売ったという非難も続いていて、そのケリをつけるべく松蔵を連れて網走まで行くその物語。結局大親分との最後のお別れとなるのですが二人が見つめ合ったまま繰り返す闇語りが読んでいるこちらにまで響いてきました。こんなに最終話を綺麗に感動的にまとめられてしまったら、シリーズの復活を望むのも失礼に当たりそうです。でもため息が出るくらい格好良いこの主人公たち、どこかでまた会いたいものです。
闇の中を生きているはずなのに、驚くべき鮮やかさ(あでやかさ?)で読み手の前にあらわれる六人の主人公。知らないでいるのはもったいないですよ。未読の方は1巻からどうぞ。 |
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【楽天ブックススタッフ 瑞】 |
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