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| 2002/3/28 |
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『あかんべえ』
著 者:宮部みゆき 出版社:PHP研究所
発行日:2002年03月 本体価格:1,800円
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どう考えても涙腺が弱くなったとしか思えません。最近、読む本読む本涙を誘われてしまって下手に電車の中で本を広げようものなら大変なことになります。今開催中の【あなたが泣いた本】で出てきた本のように、泣けるという評判があるものならば事前に覚悟も出来ているものの、今回はゲラを事前にいただいて読んだので泣き所がわからず不意の涙でやられました。
時は江戸時代、おりんちゃんの両親が深川でひらいた「ふね屋」に刀を振り回す幽霊“おどろ髪”があらわれます。といっても、普通の人たちにはお化けの本体はみえず、暴れ回る刀が見えるだけ。しかし、この騒動は近隣一帯を駆けめぐりふね屋も存続の危機に見舞われるのです。そんな騒動の中、幽霊の姿を見ることが出来たのはみんなに愛されるおりんだけ、それもふね屋にはおどろ髪だけではなく多数のお化けが集うことがわかるのです。なぜ、お化けが集うのか?死んだときの記憶を失っているお化けたちが成仏できない理由はなんなのか?おりんとお化け仲間がその秘密に迫る時、過去の大きな事件が明らかになっていくのです。
こう書くとオカルトものちっくに感じてしまいますが、本題は人の持つ心の闇にあると思います。天真爛漫で感受性がゆたかなおりんちゃんなど、ものすごくまっすぐな人の心を上手に描いている反面で、人がささやかに持っている悪意が増幅されていったり、暴かれていったりするさまが本当に見事だと思いました。そういった心の闇はその人に死霊をみせるのです。抱いてはいけない恋心が少しずつ強くなり曲がっていって、いつしか死霊が見えるようになってしまったという話が怖かったですね。おりんはお化けたちとすっかり仲良しになって、心を通わせます。寂しいときに一緒に過ごしたり、日がなお話をしたり謎解きをしたり…でも、いつかは謎を解いていつかは成仏させなければならない。気ままに楽しく過ごしているお化けたちが本当に成仏を望んでいるのかどうか?おりんはおりんで幼いながら悩みます。心の闇を持たない人間などきっといやしません、でも優しさと明るさがその闇を照らして癒していくことは出来るのだと、強く思わされました。
料亭が舞台ということだったので『初ものがたり』の時のような、季節感あふれるお料理が出てくることを期待していました。でもこのとおりふね屋はスタートから事件続きでまともなお料理を食べた人はほとんどいませんでした。読んでいるだけで美味しそうなお料理が目の前に並ぶのは、ようやく事件が一段落したこれからになりそうです。おりんちゃんのその後、ぜひ読んでみたいですね。 |
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【楽天ブックススタッフ 瑞】 |
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