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| 2002/2/19 |
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『メロス・レヴェル』
著 者:黒武洋 出版社:幻冬舎
発行日:2002年02月 本体価格:1,600円
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『そして粛清の扉を』でホラーサスペンス大賞を受賞した黒武さんの受賞第1作です。続編というわけではないのですが、前作の世界観を一部引きずった近未来の物語として描かれています。前作にひけをとらない衝撃作だと思いますが、今回は前回にもまして口の中に苦いものが残りました。
“メロス”とはかの有名な『走れメロス』のメロスの事です。舞台になる世界では「7時以降の外出禁止令」が出ていて家族の団らんを国家に強要されていたり、栄養もドリンクから無理矢理採らなくてはならなかったりとちょっと壊れた雰囲気。その世界で、人間同士の絆を試すために、命と大金をかけて国家主導で行われるのがこの「メロス・レヴェル」というゲームです。大金と名誉と命を賭けて10組のペアが戦いを挑むわけですが、命を賭けたゲームということでどうも『バトルロワイアル』とイメージがかぶって仕方がありませんでした。
レヴェルにはI〜Vまでがあって、各ステージの脱落者(セリヌンティウス役)は身体の自由を奪われます。それもメロス役の人がサイコロを振って選んだものをとられる(視覚だったり聴覚だったり)というのですからさらに残酷な気がします。さらに最終レベルでの脱落者を待つのは死です。人との絆を確かめるために…という名目で開かれたイベントだったにも関わらず、ステージが進むにつれて見えてきたのは出場者たちのさまざまな確執だという皮肉なものでした。前作と違い、感情移入できるキャラクターがいなかった事もストーリーに没頭できない要因だったかもしれません。(ちなみに私が一番応援してしまったのは犬のメシアでした。動物ものには弱いのです)
命をやりとりする話の時はわかりやすい勧善懲悪構造があったほうが、あとあと気分が良いですね。もっとも、昔から友情ものとして例にあがるメロスより、武者小路実篤の『友情』の方に強い友情を覚えた私にはそもそも向かないテーマだったのかもしれません。『バトルロワイアル』に共感を感じた方には考えることが多い小説だと思います。
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