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| 2002/2/13 |
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『木島日記乞丐相』
著 者:大塚英志 出版社:角川書店
発行日:2001年11月 本体価格:1,200円
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コミックにもなっている『木島日記』の小説版第2弾です。最初から最後までゆらめきの中にいるような奇妙な話で、登場人物の性癖や指向がどことなく壊れているため不気味でもあります。前作の『木島日記』を読んだときにも不気味な想いにとらわれたのに、怖いモノ見たさで新作にも手を出してしまいました。
歌人であり民俗学者の折口信夫の元に憑き物のように集まってきた人々が“あってはならないもの”をめぐって繰り広げられるお話なのですが、実際の主人公はそういったモノを仕分ける役を担っている木島平八郎という仮面の男です。元はといえばこの木島という男は八坂堂という古書店の店主です。どことなく挙動不審に描かれる折口先生はたまに(迷いながらも)八坂堂を訪れます。このくだりを読むたびに、イメージが京極堂&中善寺秋彦と重なってなりません。ちなみに京極堂の留守はしっかり者の奥様が守っていらっしゃいますが、八坂堂の留守を守るのは人食い(?)の根津くんです。やっぱりちょっと壊れています。
折口先生には養女(?)の美蘭という多分美少女だろうと思われる女性が取り憑いていて、史実でも愛し合っていた春洋に出て行かれてしまっています。今回彼らが出会うのは、良くミステリの題材になる津山三十人殺しの真相と人食いの関係。人間避雷針。折口家の前に置き去りにされていた赤ん坊と迷い子塔の物語など。作り話と割り切ってしまうのは簡単なのですが、どこか心に引っかかるモノを感じてしまうのです。それは偽史といわれるものの蓋然性と正史とされているものの不確かさのなせるわざなのかもしれません。そうは言ってもこの小説の場合「そりゃないだろう」と自信をもって言い切れるくらい登場人物が変な人揃いなので、あまり不安にはとらわれなくてすみます。
大塚英志さん本人が民俗学専攻の方だそうで、史実に基づいたフィクションを展開しているところが、よりダイナミックな物語を作っています。本当のところはどうだったのか?と思ってしまうと関連商品を読まずにはいられなくなりそうです。中でも「持衰」という役回りの人については非常に興味をもちました。歴史のあいだに垣間見える事象や人は時として小説よりずっとミステリアスですね。とにかくこの雰囲気は私の文章では伝えられそうにありません。オカルトや伝奇ものが好きな方はぜひ実際に手にとってみてください。ついでをいうと『多重人格探偵サイコ』の世界とも重なるところがあるそうなので、サイコファンも必読です。
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