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| 2002/12/4 |
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『ねじの回転』
著 者:恩田陸 出版社:集英社
発行日:2002年12月 本体価格:1,600円
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もしも歴史にやり直しがきいたら人類はどこをやり直すんだろう。そんな神様のような技術を持ってしまった人類が破滅に向かう自らに歯止めをかけるべく、過去に飛び聖なる暗殺を行いました。その段階から違う道を歩み始めた人類がたどったルートも、決して平坦なものではなく結局悲惨な歴史が築かれていったのです。そして、人類は本当の歴史を修復するという作業を始めます。もちろん、全部の時代をやっていたらキリがありませんから、歴史上重要と思われるポイントポイントを選んでその修復作業は行われていました。日本の歴史の中でターニングポイントとして選ばれたのが、2.26事件。時間遡行という特殊な能力を与えられた数人のプレイヤーと共に修復チームが作業を行うというのがこのメインストーリーなのです。
日本史の勉強を真面目にしてこなかった上に、残されたささやかな知識も時とともに風化しつつある私には、詳しく書かれた当時の人物たちの行動全てが新鮮でした。「なるほどーこの人はこの時殺されちゃったんだ。」とか「ここで生きのびたからこの後の時代が○○になったんだ〜。」など、この重要な歴史の流れの部分にフィクションがないことを祈るばかりです。時間遡行を実際に行うのは、その時代の選ばれた人々です。本当の流れとの大きな齟齬があると全てが最初からやり直しになるという過酷な条件の中、歴史の確定がすすみます。
しかし、そもそもが熱い思いを胸に決起した将校たち。どうしても人それぞれの思惑があるので、小さな乖離がちょっとずつ増えていきます。よりによって、この歴史修復を管理しているはずのメインシステムも長年の酷使のせいでガタが来ているためあんまり信用ならないという代物。そしてどうやら未来の時代のメンバーの中にも、この遡行を阻止して違う道に導きたがる人がいるようで、ハッカーが忍び込んだりとシステム側も一刻も気を許せない緊張感が続きます。そして結局は思いもしなかったところから大きな齟齬が出てきて…
歴史SFということでじっくり楽しめましたが、もうちょっと登場人物がくっきり書けていて人物にのめり込めたらもっともっと面白かったかなぁと感じました。ねじの回転といえば、ヘンリー・ジェイムズの古典を思い出しますが、こちらとも何らかのリンクがあるのかしら?そちらのストーリーをすっかり忘れていてしまったので、ついでに読み直してみたら感想も変わってくるかもしれませんね。読み直してみます。あ、同じく2.26事件の瞬間を舞台にした宮部みゆきさんの『蒲生邸事件』(これには泣いたね〜)と読み比べてみるのも面白いかもしれません。 |
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