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| 2002/12/12 |
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『白蛇島』
著 者:三浦しをん 出版社:角川書店
発行日:2001年12月 本体価格:1,900円
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『しをんのしおり』で三浦しをんという新しい才能に出逢って感動してから、もう半年以上の時がたってしまっていました。時間がたつのは早いもんです、ほんとに。
拝島は世間の流れから適度に切り離された感のある孤島です。高校生の悟史は13年に一度行われる大祭に出るため島に戻ってきました。島には独特の文化と因習が脈々と受け継がれていて“持念兄弟”という存在もその一つ。これは家の長男同士が持念石と呼ばれる石を分けて持つ風習のことで、悟史にも光市という兄弟がいます。持念兄弟にはは本当の兄弟よりも親しく過ごし、助け合うという決めごとがあって悟史と光市も深い絆を感じながら育ってきたのです。血より濃い絆ですからそれをめぐる噂の中には雨月物語のような話もあったりします。
島全体の神事を司る家、神宮家にはもっと不思議な話があって、世継ぎの背中に蛇のウロコがあるらしいのです。これが神と対峙出来る能力を持った人間である証拠なわけなのですが、幼い頃から一緒に過ごしてきたその家の長男の背中にはそんなものはありません。でも家を継ぐ権利のない弟の背中にはそれがあるのかもしれない…これも物語をかたちづくる重要なファクターの一つです。また、悟史自身も実は昔から見えざるものを見ることが出来る能力を有した人間でした。
大祭を前にして、島で昔から語り継がれている「あれ」という怪物が出現したという噂があったり、宮司の代替わりを邪魔する謎の存在があったりと読むものの心を離さない工夫が満載でクライマックスまで向かいます。次男は島を出なければいけないという決めごとに対する人々の思い、濃密な関係の中だからこそ生じる愛憎。島の閉鎖感や淡い恋。こう書き出してみただけでもものすごいテーマの数です。それをストーリーを足止めすることなく織り込んでいく三浦さんの筆は大したもの。全体的には子どものころよくやった「なりきり遊び」(秘密基地を作ったりとかそういうやつ)に近いワクワク感があります。この雰囲気が出せるのはものすごい妄想パワーを持った三浦さんならではの事でしょうか?贅沢を言わせてもらえれば、設定を事細かく語った前半のボリュームと事件が動き始めてからのあっけなさがちょびっと気になりました。
私が読んでも面白かったけど、これはぜひ中高生にオススメしたいです。ふと故郷に帰りたくなる小説でした。 |
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【楽天ブックススタッフ 瑞】 |
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