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| 2002/12/10 |
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『四日間の奇蹟』
著 者:浅倉卓弥 出版社:宝島社
発行日:2003年01月 本体価格:1,600円
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発売前なので紹介しようかどうしようか悩んだのですが、この感動が古くならないウチに言葉にしておきたくなったので日記に書くことにします。今年創設された「このミステリーがすごい!」大賞の金賞受賞作がこの本です。宝島社さんから仮とじ本をいただき、一足早く読むことが出来ました。
このミスで選んだ本ならばガチガチのミステリーなんだろうと思いきや、謎解き色はほとんど無くてクライマックスシーンは泣きっぱなし。流れてくる涙をぬぐう時間ももったいなくページをめくるような状態が続きました。今年泣いた本ランキングというものを作るのなら、3位以内に入ります。(あっ、でも実際の発売は来年だ…)あまり詳しくは書けませんが、本筋のメインネタはミステリ好きなら大半が知っているであろう有名なお話に酷似しています。その点については受賞作決定までの道のりで何度も議論があったようですが、これだけ心を揺さぶられるならば小さな欠点でしかないし、欠点にもならないのではないかと思っています。自分で言うのも恥ずかしい話ではありますが、これを読みながら流した涙というのは本当に素直でピュアな涙ではなかったかと思うのです。
指を失ったピアニストと脳に障害を負った少女が主人公です。少女はサヴァン症候群のような傾向を持っていて、一度聞いた音を完全に再現してみせるというたぐいまれな能力を持っているのです。彼らは施設をめぐりピアノを演奏するという生活を続けています。その旅の中で、この四日間の奇蹟に出会うのです。内容について詳しく書くのは避けたいと思いますが、誰もが抱える満たされない想いを奇蹟が溶かしていくそのさまは作品の世界を突き破り読者にも届いてきました。
新人賞受賞作というと、とかくあら探し読書をしがちでした。でも、今回はそれではきっと損をすると思います。また、脳障害の説明をするために時折専門的な脳の話が挟まれるので、もしかしたらそのあたりで足を止めてしまう人もいるかもしれません。しかしそれはあまり気にせずに、この中で紡がれている言葉と描かれている音楽に心の底まで酔いしれてみてください。あ、せっかくだから手元にベートーヴェンの“月光”を用意しておくといいかもしれません。絶対聴きたくなりますから… |
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【楽天ブックススタッフ 瑞】 |
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