【瑞】さんにあんなことを書かれたもんで、読んでみました。人物評価が人によって分かれるみたいですね。みはるの失踪が許せる人、そりゃないだろうと言う人、一晩たってもみはるが帰って来なかったのにそのまま出張に行った純之輔に納得出来ない人、理解できる人。私は、二人ともの気持ちがわかる気がしました。
と言うとなんとも八方美人のようですが、まず【瑞】さんがプリプリ怒りに筆をふるわさんばかりだった純之輔については、ああいう理詰めな理性の勝る人っていうのは、私の知り合いにもいるんですが、「事故か事件にまきこまれたんだろうか、いや、そうではないかもしれない」とかなんとか理屈で考えているうちに、自分の気持ちさえわからなくなってしまうんですね。本能が理性に抑圧されて、心の声が聞こえなくなっているような。そんなだから、目前の出張を優先して出かけてしまうのは、彼にとってはしかるべき選択なのです。こういう男の人は、目の前でみはるが「私、死のうと思うの」と言ったとしても、「この女は本当に死のうと思っているんだろうか、いや、違う」とか考えて、結局出張に行く人です。みはるの姉の感情人間さとの対比がまた際立っていて、向き合った二人の間でやかんがけたたましく音を立てるシーンの描写がとても印象的でした。そうそう、この男はこう考えるはずだ、と。
一方の、失踪したみはるですが、これもわかります。世の中、絶対と思っていることは、思ったほど絶対ではなくて、たとえば明日から突然ぷっつり1週間会社や学校を無断で休むとか、あり得ないと思うことかもしれないけど、もしやったらやったで、それなりに世の中は回っていくのです。それを自分が想像できないだけで。自分の行動にはまっている枠なんて、そんなもんではないかなと思います。みはるは、たまたまきっかけがあって、その枠を飛び越えてしまった、飛び越えてみて、「ああ、こんなのもありなんだ」と気づいてしまった、それだけのことなんだと思うわけです。
【瑞】さんの「教訓」は、私もしみじみと何度か読み返してしまいました。ぎゅっとね、ぎゅっと。しかし、理性男純之輔にはきっとできない行動です。そんなことをしたらああでこうで、と行動のリスクと効果とを考えていそうです。そもそも自分にとって本当に大切な誰かが見えなくなってたりするタイプだし、プライドも捨てて思い切った行動に出るだけの感情の爆発があり得ない――と悪口を並べていて思い出しました。そうだ、失踪5年後の純之輔の行動は、やっと何か枠を越えられたものだったのです。失踪の「理不尽さ」が、彼の醒めた「感情」を揺り動かしたように思えます。
でも、純之輔にとって、5年後に手に入れたその真実は、どうだったのでしょうか。恋愛で「あのときこう思っていたのよ」という真実のタネ明かしの機会ってなかなかないものですが(そんな深夜番組があります)、知りたい一方、知らないほうがいいのか。いや、純之輔の行動を結果でとやかく言うのはやめましょう。それがとっても欲しかったのだから、手に入れるために、行動した、と。心にふたをしてあきらめる言い訳を考えるくらいなら、本当に欲しいもののために心を解き放つ、それでいいんじゃないですかね。
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