帯に「人間のあらゆる欲望を体現した男」とあるとおり、この物語を一言で説明すれば、どうしようもない「ろくでなし」の一生を描いた物語です。
世に「ろくでなし」と言っても、様々なタイプがあると思いますが、「仕事しない」「博打をする」「酒を飲む」「暴力を振るう」「女癖が悪い」これらの要素を全て持ち合わせ、かつ「身勝手で自己中心的」な、まさに「ろくでなし」の鏡のような人物が、この本の主人公である金俊平です。
その「ろくでなし」ぶりを少し解説すると、身の丈2メートル近いヤクザも恐れるこの男には、無理矢理添い遂げた妻がいるのですが、自分は仕事はせずに妻に働かせ、代わりに外に妾を作って入り浸り、金が必要になると家に戻ってきて、嫌がる相手を暴力で脅して金を借り、博打に使い込み、酒を飲んでは暴れて、飲まなくても暴れて、暴れ出したら止まらずに家を壊して近所に怒鳴り込み、何度も刑務所にぶち込まれ、暴力に耐えかねた妻は子供と逃げだし、浮浪者同然になり、そうかと思えば、戦時中には、子供を連れて疎開した先で博打をして逮捕され、残された子供は飢え死にしてしまう。
というように、とにかくもうどうしようもない「ろくでなし」です。もちろん、今のエピソード以外にも、数多くの「ろくでなし」ぶりが、これでもか!と出てきます。
この金俊平、元は蒲鉾職人で腕は良く、戦後、妻に資金を工面させて蒲鉾工場を開きます。物不足の時代に、蒲鉾工場は大当たりして、あっというまに大金持ちになるのですが、しかし、金持ちになってからも自己中心に変わりはなく、タンスの中には、終戦間もない当時の金で数千万円ももっているのに、子供の養育費はビタ一文出さない。代わり家のそばに妾宅を作り、飲んでは暴れるの暮らしもそのままで、やがて蒲鉾工場を畳むと、今度は金貸しとなって、高利で貸し付け、強引に取り立て、払わなければ拉致して…という、自己中心6速全開のまま70才近くまで生き、最後は病で倒れ、妾に金を持ち逃げされ、悲惨な最期を迎えます。
では、興味がある人は読んでみてください。
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