これは笑えます。爆笑と言うより苦笑ですが、とにかくバカバカしいほどに面白くって久しぶりにお昼休みを惜しんで読み切ってしまいました。タイムスリップものは数あれど森鴎外が突然現代の渋谷・道玄坂に飛ばされてくることから始まるのです。(あ、作家のコメントで「作品内で森鴎外が何をするか、だれにも言わないでください」ってかいてありました。う、どうしよう)
よくテレビ番組になるカルチャーギャップをとりあげたお笑いというのがあまり好きではなくて、ついついチャンネルをかえてしまうのですが、やっぱり異文化に飛び込んだ人の反応は笑えますね。大正の時代からいきなり80年後のそれも渋谷に連れてこられるのですから反応は推して知るべし。今の日本国内でもかなり突飛な文化を持った街ですものね。でも、ここがエリート森林太郎の頭脳の見せ所。「ほんまかいな」と呟きたくなるような理解力と順応力で現代の風俗に染まっていくのです。
電車に乗ったりケータイを持ったり(もっと凄いこともしてます)する一方で、お札になっている夏目漱石を羨んだり、自らの名前を冠した賞が作られている芥川龍之介に複雑な思いを抱いたりとそういう人間臭さがたまりません。フィクションとわかっていながらも先日『片思いの発見』を読みながら胸に抱いた、「森鴎外って酷い男ね」という印象が薄れていくのを感じています。
デビュー作で一挙にこの作家を有名にした『邪馬台国はどこですか?』以来、ジャンルは歴史ミステリなんだろうと思っていました。そのまましばらくご無沙汰していたら、すっかり馬鹿っぷりを増しちゃったんですね。ということはジャンルはバカミス?…でもこの壮大な大嘘つきぶりは爽快です。ミステリとしてのストーリー展開やオチはかなりいい加減感が漂っていますので、厳格なミステリファンは怒るかもしれません。そういう人は多分読まない方が良いです。でも、面白ければ良いではないですか。受験用の勉強で近代の文学に恨みを持ってしまった人にはぜひとも読んで欲しいです。なんとなく親近感が沸きますから。 |