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読書日記 2004年3月31日更新
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2002/11/14
『片思いの発見』

著 者:小谷野敦
出版社:新潮社
発行日:2001年09月
本体価格:1,300円
高校の教科書で夏目漱石の『それから』に出会ったのが、私の人生いろんな意味でのターニングポイントになったなと未だに思っています。(だって不倫の話なのに教科書に載るんだから、この衝撃といったら…)あの話の授業を聞かなかったら…、もしあの授業であの質問をされなかったら…多分今この仕事には就いてなかったかもしれません。ということは、あんなことになってたかもしれないし、こんなことになってたかもしれないなぁと、秋の夜長違った選択肢を選んだであろう自分に思いをはせているのです。
私はこのように、その時読んだ本で思い出をよみがえらせるタイプの人間です。とすれば、古典文学というものは(古典に限ったことではないですが)時代の記憶そのものなんじゃないだろうかと思うわけです。そして、この本は古今東西の恋愛文学を紐解き、片思いについて論じるという由緒正しい文芸評論。時代とその風俗がありありと蘇ってきました。

小谷野さんというと『もてない男』のイメージが強いので、もっとくだけた読み物を想像して読み出したのですが、思いの外内容が堅くて驚かされました。片思い物語として名高い『シラノ・ド・ベルジュラック』あたりから始まり、『源氏物語』に見る強姦と片思いの違いとか、『舞姫』の森林太郎の酷い男っぷりなぞが語られていきます。題材にしている物語や作家がポンポン飛ぶのでちょっと読みづらさがありましたが、「なるほど、こういう見方があるのね。」と感心することしきりです。高校や大学で文学史を教わるときにこういった恋愛ネタを絡めたらもうちょっと興味をもって覚えられたのになぁと残念ですが、もしそうなってたらきっとどうでもいい雑学ネタばっかり記憶しちゃったんでしょうね。

小谷野さんによると、片思いというのは文学的には恋愛の王道ではなかったようです。特に近代文藝においては「女の片思い」は美しく描かれても、「男の片思い」が美しく描かれることはないのだそうで、もっと驚かされたのは玄人女を口説く男は非難の対象にならないということ。執拗に思い続けて口説くのは玄人女にしろという事のようですが、ここに恋愛の非対称性がみられます。まあ中身について書いていくときりがないので、ぜひ本を読んでみてください。でも、思いが叶わない辛さを文字にして昇華させるというのが文学だと思っていたので、最もその思いが強そうな“片思い”が恋愛のうちに入らないってのは不思議な気がします。

冒頭に書いた『それから』も友人の妻を奪う物語です。国語教育はこれでいいのか?とか日本語ブームとかそんな事が騒がれていますが、こういうすごい題材をせっかく教科書に載せるのだから、もっと刺激的な授業をしてあげて「本当は文学ってこんなに面白いもんなんだ。」と多感な思春期の人たちに気づかせてあげて欲しいですね。まだまだ古典には刺激的な恋愛がいっぱい転がっていそうです。私もこれを機に何か読み直してみようかなと思ってます。
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