| <<前日の日記へ | 翌日の日記へ>> |
| 2002/10/7 |
 |
『覘き小平次』
著 者:京極夏彦 出版社:中央公論新社
発行日:2002年09月 本体価格:1,900円
|
淡々としているのです。怪談を現代に蘇らせるという試みとしては『嗤う伊右衛門』がありました。あれを読んだのはかなり前になるため記憶があやふやだったのですが、ここまでもやもやした話ではなかった気がします。そう、なんだかとってももやもやしているのです。輪郭が薄いというかぼやけているというか…そうか、幽霊を書いているから当然なのか…と作り出された物語世界の雰囲気に驚きます。
読んでみても小平次という人はよくわかりません。元ネタを知っていたら味わいも深かったんだとちょっと残念です。たまたま『日本の幽霊名画集』を見ていたら“こはだ小平次”という絵が出ていました。幽霊の世界では有名人なんですな。とにかく話を読むところによると、ものすご〜い大根役者で、セリフなんか全然覚えられないものだからぬぼーっと立っているだけ。それでも怖い。だから名物幽霊役者なのです。彼は家にいる時には押入の中から外を覗いているのです。そんな旦那を気色悪く思う女房のお塚。お塚に横恋慕する男、闇にうごめく悪党たち…そして浮かび上がってくる名前の中に、治平とか又市という聞き知った名前もあります。
どうしてもこの芝居には幽霊の役者が欠かせない、と呼ばれて連れて行かれた小平次ですが、どうやら裏には大きな陰謀があるらしい。そして小平次はその中で殺されてしまったらしいのです。でも、小平次の家の押入にはこちらを覗く目が…
実は冒頭部分にちょっと退屈感を感じました。(久しぶりに難しい漢字をたくさん見たから脳味噌が疲れただけかも)でもグイグイ引き込まれます。怪談というほど怖くなくて、漂う不可思議な空気に魅入られたようなそんな読書時間でした。幽霊を描くということは、人の恨みつらみやねたみなどを形にすることでもあるそうです。生きていても死んでいるかのような小平次はまるで生き霊のように我々の目の前にあらわれます。でも彼よりも周囲の人物たちの方がずっと怖いし、悪しき感情を多く背負っているのが面白いところです。幽霊って人のやましい気持ちを反映するのかもしれませんね。 |
|
【楽天ブックススタッフ 瑞】 |
|