とにかく静かな小説でした。クライマックス前の雪のNYのシーンなどでは、親友3人が雪に残した足跡と周囲の静寂を感じ、それだけでなぜだか涙が出てきます。外国文学でこれだけの余韻と静寂を感じる本って久しぶりに読んだなぁと言うのが読後すぐの感想です。
この本は前々から周囲では話題の本でした。モンティというヤクの売人が収監されることになって、収監前の24時間を友や恋人や父親と過ごす・・というのがストーリーという事は知っていたのですが、何となくハードボイルドなイメージをもっていてしまったため敬遠していました。今となってはその敬遠していた時間が一番の後悔ごとです。そうこうするうちに、本の雑誌が選ぶ今年のベスト10の4位になったことで、パラパラめくってみる機会があって読みたい気持ちがむくむくと持ち上がって来たのです。
明日死ぬ事がわかっている。というケースでは死が悲劇だとしても未来を想像する必要はありません。しかしながら刑務所に7年間入ってきたあとではそれまでの生活が無難に延長されていくわけではないのに、そんな未来を想像しなければならないのです。モンティ本人はもちろん、最後の時間を共に過ごす愛するものたちもそれを非常に強く感じながら最後の時を過ごします。物語中では共に時間を過ごす親友、フランクとジェイコブの日常がさりげなく関わってきます。たとえそれが衝撃な出来事だったとしても、彼らの時は変わらずに続いていくことが対比となってより強くそれを感じました。
人が生きていくなかでは輝いている瞬間というのがいくつもあると思っています。たった一日の彼らを追っただけの小説で、ベニオフは登場人物たちの輝ける時をいくつも映し出しました。過去はもちろん未来までです・・とにかくその文章の計算し尽くされた(?)技に感服です。日々淡々と時間が過ぎていく、その平凡な毎日に身を任せようとしていた私はこの静かな小説にちょっとだけ心を泡立てられています。外国文学に抵抗のない方はぜひとも読んでみて下さい。 |