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| 2001/8/24 |
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『欲望』
著 者:小池真理子 出版社:新潮社
発行日:1997/07 本体価格:1,900円
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先日の『月狂ひ』があまりに鮮烈だったので、性懲りもなく小池真理子を読んでいます。今回もまた、ため息が止まらない作品でした。
私の捉え方は間違っているかもしれませんが、これは三角関係の物語だと思っています。秋葉正巳・阿佐緒・類子、一見不安定そうに見える3人の関係は奇妙な連帯感で繋がれているようです。共通するのは“満たされていないこと”なのではないかと思えます。阿佐緒は30歳年上の袴田と結婚。幸せに見える彼女は強く子どもを欲しますが、袴田はその心を満たしてはくれません。類子は妻子持ちの高校教師、能勢と貪るような肉体関係を築きつつ、正巳に強く強く惹かれていきます。そして、正巳は性的不能者でした。類子はずっと長い間正巳に惹かれていたのですが、なかなかそれを言葉にすることはありませんでした。というのも、正巳が追い続けたのは阿佐緒だったからです。そんなすれ違いの2人を結びつけたのは三島由紀夫の小説たちでした。時を超え、袴田が三島邸そっくりの邸宅を建てたことで、運命の糸は何度も3人をたぐり寄せます。
正巳と類子がお互いの距離を縮める過程でとても心に残ったシーンがあります。満天の星空の中で、正巳が手を広げて阿佐緒の事を語る、類子がその手を見ながら多少の嫉妬を覚え相手を改めて男性として意識する・・そんなシーンです。この時もそうですが、正巳と類子にはセックスのシーンがありません。一方類子と能勢の愛は極めて肉体的、表現も露骨だったりします。なのにしかし、正巳と類子のやりとりの方が官能的なのです。単なる手の描写ひとつ取ってもどうしてこんなにエロチックなんでしょう・・・
全編に三島文学が流れているので、三島由紀夫をあまり読んでこなかった私には多分本当の価値はわからないのだと思い、ちょっと後悔しています。だから余計に三島ファンの意見を聞いてみたいものだなぁとも思うのです。そうすればきっと正巳と類子の“精神的な交合”がより深く理解できるんでしょうね・・
でも、本当に正巳の美しさが印象的な小説でした。ものすごく切なくて、哀しいくらいに壮絶な愛のやりとりに心が震えます。 |
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【楽天ブックススタッフ 瑞】 |
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