かつて、NHKの金曜時代劇で好評を博した「清左衛門残日録」の原作です。作者は藤沢周平で、同じく金曜時代劇の「腕におぼえあり」こと「用心棒日月抄」から好きになり、その流れで見たのですが、非常に良いドラマでした。
息子に家督を譲り隠居した三屋清左衛門。元用人という立場ゆえか、隠居後も何かと仕事を頼まれ、次第に藩の派閥抗争の渦中に巻き込まれていきます。最後には、隠居ながらも、敵対する派閥の領袖と直談判に及び、藩の混乱を収拾する大役を果たします。
残日録というと、人生の残る日を綴る、という暗いイメージが先に立ちますが、清左衛門が嫁に語るには「日残りて昏るるに未だ遠し」ということで、隠居後の寂しさを感じながらも、周囲から頼りにされ、良き友がいて、息子夫婦との仲も良好。定年退職後のサラリーマン理想の隠居生活かもしれません。
小説をドラマ化する際に、原作の風合いを損ねることがままありますが、この作品については別で、個人的には、原作に沿ってはいるものの、脚色されているドラマの方が性に合いました。
小料理屋の女将との慕情や、用人の地位まで上り詰めた清左衛門と、かつての派閥争いに敗れ凋落した幼なじみ、その2人の息子の友情、また、夫の出世を願う嫁と、生来の真面目さで、息子の出世の口添えすることができない清左衛門の悩み、などなど上げればきりがありません。
もちろん、派手な立ち回りや、どんでん返しもなく、淡々と描かれているにもかかわらず、読み手を惹きつける原作も大変すばらしく、是非とも読んでいただきたいと思います。 |