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読書日記 2004年3月31日更新
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2001/5/10
『赤目四十八瀧心中未遂』

著 者:車谷長吉
出版社:文藝春秋
発行日:2001/02
本体価格:448円
直木賞受賞の本作の文庫化を機に、はじめて車谷長吉作品に触れました。今、激しく後悔しております。いえ、作品は良かったのです、とても。何故、もっと前から車谷長吉を読まなかったのかという後悔。未読の作品リストを前に、おお、また、あの読書の愉楽を楽しむことができるであろうという予感に震えております。このような「私小説」が未だに存在し、直木賞を冠される程、世に受け入れられているのか、という驚きもありました。私が、所謂、無頼派作品に耽溺していたのは、二十歳前後の頃。あのような「文学を唯一の糧とした、負け続ける人生」に、何故、惹かれていたのか、今となってはわからないのですが、通過儀礼的なものかも知れず、多少、気恥ずかしくも回想しています。社会に出る前にあらかじめ挫折していてどうする、と思うものの、そういう甘さや感傷も「読書」の媒介ではなかったのか。今、ビジネスの現場にいて、「成功方程式」を信奉しながら、いかに「前向き」に社会と関わっていくかを考えている自分がここにいます。しかし埋めようのない心の隙間はあるもので、どうしようもない「心の闇」を描いたものに惹かれていく「読者」としての自分も依然として存在するのですね。業務があまりにも忙しく「読者」であることを止めておりましたが、ようやく、復活です。

語るべき過去もなく、無気力に生きる理由さえないまま、ただ無気力に生きる「私」。会社員としての生活を捨て、近しい人々との関係も失い、逃げのびた場所は、尼ケ崎のはずれにある『温度のない町』。古ぼけた木造アパートの一室で、終日、臓物を刻み串に刺し、焼き鳥の下ごしらえの請負仕事で糊口をしのぐ、生きる目的を失ってしまった男。彼の周辺に現れる人物たちは、それぞれ重い人生を背負いながら、この「奈落」に生きている。階下に住む彫り物師と、その愛人である女性との関わりから、男の人生は急転するかに思われたが…。主人公の停滞しきった心の淀みと、周囲の人々の「それでも生きていく」力強さの対比が、この行方の知れない物語を彩っていました。暗い作品でありながら、どこかユーモラスですらある。つげ義春さんの『ゲンセン館主人』の主人公のような、暗い面相をした無気力な男性像を想像してしまいましたが、川本三郎さんも本書の解説で、つげ作品を引き合いに出されていて納得。本書の主人公は私と同い年。あたりまえの大学生から会社員となり、その生活を捨てて、逃げるように生き続ける無為、については、より「無為」であると実感できます。駄目になってしまったインテリ。結局、その無用なインテリジェンスが、どんな底辺の暮らしにあっても、「意味」を考え続けてしまう。結局、「堕落」もできない、駄目の悪循環。ついぞ興奮してしまい、本棚から『葛西善蔵集』を引っ張りだして読んでいたのですが、いや、善蔵の方が、まだ「前向き」なのでは。対照的ですが、保坂和志さん描く「なにもしていない」人たちの感覚も面白く興味深いですね。同じ芥川賞作家でも、私の共感は笙野頼子さんにあって、あの世の中に対するスタンスに惹かれていきます。最近作の『渋谷色浅川』にも『「外部との接触」が「内向的な人間」の「世界認識」に「劇的展開」をもたらすという読み筋はあまりに「正し」すぎて、説得力がある分不快だった』という後ろ向きな一文があり、唸っておりました。変化を求めず、懸命に、精一杯、「なにもしていない」こともまた、世の中に対する毅然とした自己証明であるのか・・・。

本書は、「なにもしていない」主人公が、結局、心中すらできぬまま、更に不毛な日々を送り続ける中間報告なのですが、彼が、いつか「小説」を書き始めるのではないかという予感を与えてくれます。奈落の底で困り続ける主人公が、いつか見出すかも知れない、箱の底に残された一抹の希望?。いえ私小説もまた『書かずにはいられない、呪いにも似た悲しみ』であったか。書くことによって、救いはあるのか。車谷長吉氏は、手先で書く器用な作家ではなく、いわば、全身小説家であり…。いえ、邪推は止めて次の作品を読みましょう。私もまた「読まずにはいられない」読者なのです。しかし、仕事は前向きに、頑張ります(そうでなくては)。
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