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読書日記 2004年3月31日更新
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2001/3/5
『絵本を抱えて 部屋のすみへ』

著 者:江國香織
出版社:新潮社
発行日:2000/12
本体価格:667円
先週の月曜日の「読書日記」で【瑞】さんに先を越されてしまいました。私もちょうどこの本を読んだところだったのでビックリ。読む人の数だけ感想はある、などといいつつ、あえて重複いたします。

先日、お客さまから子どもの頃に読んだ絵本をもう一度読みたいけれど、著者もタイトルもわからない、というご質問をいただきました。いくつかの「憶えていること」をお聞きして、なんとかその本らしき候補を捜し出しお答えしたところ、まさに正解。喜んでいただき、我々スタッフとしても嬉しかったです。私はあまり本を読まない子どもだったのですが、小さい頃読んだ本には、やはり特別な思い入れがあります。懐かしくも温かい記憶。子どもの頃に読んで、印象に残っている本、影響を受けた本のことを話すのは、自分自身のことを語っているようでちょっと気恥ずかしさもありますが、その本の話をすれば何か伝えることができるような気もします。とはいえ、淡い記憶は淡いままで普段は思い出すこともなく、伝えようとする言葉も「想い」に届かないことが多い。本書『絵本を抱えて 部屋のすみへ』は江國香織さんによる子どもの頃に読んだ絵本の追想や、新しい絵本との邂逅について語った一冊。子どもの頃の心の動きをそのまま覚えていること、それを言葉に換えられること。その感受性の豊かさと、心の動きを類推させる表現の的確さ。名づけ得ない感情や感覚を言葉で解いていく、静かで美しい随想集です。こうした豊かな「言葉」で自分の好きな本のことを伝えられたらどんなに良いだろうと思いますね

学級文庫に自分が提供した『花さき山』を、クラスの気になる男の子が借り出して読んでいる。そっと気づかれないように見守る江國さん。彼の表情から、あ、今、あの場面にさしかかったに違いない、なんて想像しながら見ている。この一節、とても好き。自分の好きな本を、他の人が読んで、その心に、わーっ、と感慨が膨んでいる(かも知れない)瞬間を想像するのはとてもワクワクすること。多分、子ども心にも、そんな感覚はある。結局、その子に「おもしろかった?」とは訊けなかったのだけれど・・・。本の内容だけでなく、それににまつわる色々な思い出もまた、本の記憶の一部なのですね。『小学校の一年生だか二年生だかのとき、ひんやりと日のあたらない新校舎一階奥のうす暗い図書室で、はじめてマドレーヌちゃんの本をみたときの感じはいまもよく憶えている』。なんとなく記憶に残る子どもの時代のある瞬間を類推してしまうところもあって、こういうところ、すごく良いなあ、と思いました。本の記憶は、時間や場所と結びついている。その本を読んだ頃の記憶。一緒に読んでくれた家族の記憶であったり、この本面白かったよという話をした友だちの記憶でもあったり、時には慰められた辛いことの記憶でもあったり。本を読んで楽しかったなあと思う記憶を、幸福な瞬間として焼きつけられるなら、いつかもう一度、その瞬間を本から呼び覚ますことができるのかも知れない。本書には沢山の絵本が紹介されています(本のタイトルをクリックすると目次や内容情報をご覧いただけるようになりました)。皆さんの記憶とシンクロするものがあるでしょうか。

私が絵本に興味を持つようになったのは、10年ぐらい前で、もはや子どもとは呼べない年齢でした(『花さき山』の斎藤隆介さんにもハタチ過ぎてハマリました。一番好きなのは絵本ではなく長い物語の『ゆき』)。今江祥智さん、瀬田貞ニさん、鳥越信さんの絵本紹介や絵本論からの影響が大きかったのですが、本書で江國さんと対談をされている五味太郎さん、(文庫版で)解説を書かれている小野明さん、お二人の絵本についての対話集も刺激的です(現在は平凡社ライブラリーで出ている『絵本をよんでみる』。続編の『絵本をよみつづけてみる』も楽しい)。本書もそうですが、絵本には沢山の優れたガイドがあるので読書指針にはことかきません。大人には大人の絵本の楽しみ方があって、多少、考えたりしながらかも知れないけれど、良いものと出会った瞬間の心の動きは同じで、それもまた大切にとっておきたいと思うのです。あの本を読んだのは、こんな仕事をしていた時で、なんて思い出す記憶装置になるのかも知れませんね。

冒頭でも触れましたが、楽天ブックスでは、本に関するご質問や、ご相談など、皆さんからの声をお待ちしております。また、こんな本を読んで面白かったよ、と、お気軽にお話を聞かせていただければ幸いです。沢山の人の本を読む心の動きがあって、それぞれ違っているのが、またとても良いと思っています。ネットを通じて、本で交歓できたら、という理想はなかなか実現できませんが、ささやかだけど前進していきたいと思うのです。ところで、私は、ここのところ『さんびきのちいさなどうぶつ』という絵本に悩まされています。寓意を読み取ろう、なんて考えが悪いのかも知れないのですが、読むたびに、疑問符だらけ。実に不思議な本で、どなたか読み解いてくれまいか、と考えております。素直に楽しめば良いのかな???。
【楽天ブックススタッフ 知】


【読書日記】では、楽天ブックススタッフが自分たちの読んだ本を日記形式で紹介していきます。

新刊本・未刊本・絶版本。定番から変わった本まで、いろいろな本が登場します。ほぼ日替わり、何が飛び出すか、乞うご期待!
皆さんが読んだ本、良かった本、面白かった本も、私たちに教えて下さい。
お便りはrecommend@books.rakuten.co.jpまで



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