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| 2001/3/30 |
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『テスタメント』
著 者:ジョン・グリシャム 出版社:新潮社
発行日:2001/01 本体価格:2,400円
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性格の悪い老大富豪トロイ・フェランが110億ドルもの資産を遺して高層ビルから飛び降り自殺。借金まみれの遺族達は色めき立つが、このいじわるじいさんは最後のいやがらせにその遺産のほとんどを誰も存在を把握していなかった女性を相続人にする遺書を遺していた。女性は宣教師として南米の奥地で活動しており、連絡がつかない。彼女を探す任務を与えられたのが元アル中の弁護士ネイト。手に汗握る人間ドラマです。
グリシャムは最近、シドニー・シェルダンみたいになってきました。構想を練る段階から映画化を意識しているのでしょうか、今回はアマゾン(本屋ではない)の湿地帯がでてきたりして、派手なストーリー展開に拍車がかかっています。法廷ものというより「インディ・ジョーンズ」みたいなアドベンチャーものに近いようです。そして絵に描いたようにろくでもないフェランの子供たちや強欲な元妻たち、金勘定に血道を上げる遺族側の弁護士たちとレイチェルの高潔さの対比。(レイチェルがカトリックの宣教師というのは少し時代錯誤的ですが、これは展開上はずせない設定です。)とてもわかりやすく、ハリウッドが大喜びしそうなストーリーで、アメリカでベストセラーになったのも納得できます。
何年も前に何の予備知識もなく「評決のとき」を読んだときは、若い弁護士が人種差別の残る南部の田舎町での到底勝ち目のない裁判に立ち向かうというストーリーに、丁寧な人物描写や社会への問題提起が重みを与えていて読後も余韻が残りました。「法律事務所」や「ペリカン文書」、「依頼人」なども嫌味のないエンターテイメントとして楽しめました。でも今回の「テスタメント」はちょっとやりすぎみたいです。自然破壊とか家庭崩壊などの問題もあとからくっつけたようで説得力に欠けます。ただ、著者本人は楽しんで書いてるなというのは伝わります。衛星電話の細かい描写など、「きっと取材に行ったんだな、楽しかったんだろうな。こういうのってやっぱり出版社持ちなのかな。」とか考えながら読んでしまってなかなか集中できませんでした。
この本の後半部分は体調を崩して寝込んだついでに一気に読んだのですが、ネイトがジャングルで「テング熱」にかかって苦しむ場面は妙にリアルでした。本がおもしろいかどうかは読む人間の精神の状態にもよるのでしょう。今はついていけないと思っても、他のシチュエーションで読めば、「おもしろい!」と思うのかもしれません。
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【楽天ブックススタッフ 真】 |
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