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| 2001/3/2 |
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『さつき断景』
著 者:重松清 出版社:祥伝社
発行日:2000/11 本体価格:1,700円
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「重松清はいいよ」と、さりげなく一言残して私の横を通り過ぎたのも本の師匠の一人でした。その時薦められたのが『ナイフ』。いじめが題材になっているこの本は正直なところちょっと抵抗がありました。あまりに等身大で生々しくて、本当にナイフで胸をえぐられているような感覚があったからかもしれません。で、新刊が出る度に読み続けての一番のお気に入りは『エイジ』になっています。楽しさと繊細さが同居する文章だと捉えていましたので、ご本人をお見かけしたときはあまりの豪快さにびっくり。(失礼)でもきっと、重松さんの文章にでてくるようなちょっとやんちゃで、ちょっと多感な少年だったんだろうなぁと想像させられました。とにかく直木賞受賞おめでとうございます。
で、今回は15歳のタカユキ・35歳のヤマグチさん・57歳のアサダさんの日常を描いた連作(なのかな?)に、なっています。本の作りが面白くて、3人の日常は全く交差することなく描かれていきます。1995年から2000年までの1年ごとの5月の様子を描いた客観的な日記みたいな感じ。1995年と言ったらサリン事件や阪神・淡路の震災があった年ですから、そこで登場人物たちはいろいろな体験・または感想を持っています。その後がどうなっていくのかというちょっとした成長小説ですね。ちなみにタカユキは阪神の大震災に非常なショックを受けて、GWの前半にボランティアツアーに参加しました。そういうことをちょっと格好悪いことだと思っていつつも懸命に働いてしまった人の良い少年です。ヤマグチさんはサリン禍を一本違いの電車に飛び乗ったことでのがれました、良かった良かったと言うことは出来ずこれまた事故喪失感に苦しみます。アサダさんは定年間近、娘も結婚するし悠々自適の筈なんですが、これまた息子との対話に苦しんだりする小市民なお父さんです。
と、各世代が「こういう事ってあるなぁ」とついつい思ってしまう光景が繰り広げられていきます。そんなところが重松さんの作品の一番の魅力じゃないんでしょうかね?小説そのものではたいした大事件や猟奇事件は起らないのに、刻々と刻まれる実際にあったニュースが小説顔負けの大事件を起こしているところが一番興味深かったですね。まさしく「事実は小説より奇なり」って感じです。しかしそれも困ったものですね。 |
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【楽天ブックススタッフ 瑞】 |
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