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| 2001/12/10 |
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『さいはての二人』
著 者:鷺沢萠 出版社:角川書店
発行日:1999/12 本体価格:1,300円
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『センセイの鞄』には思った以上の反響をいただいて、色々な方の感想も聞かしていただきました。女性の方はいたって好意的・素直な感想が多かったのですが、男性陣の感想はさまざま。「嘘っぽい」「あんな風にきれい事だけじゃないはず」とまぁ感動とはちょっと違う読み方をされた方が多かったようです。ほんわかしている空気があの本のいいところだと思うので、あれはあれでいいかなぁと個人的には思うのですが、読みながらちょっと思い出した本があって、もう一度読み直してみたというのがこの『さいはての二人』です。
2年間共に暮らした男に裏切られ、一人で生きるために飲み屋で働きはじめた美亜は常連の宮本さんと出会います。実は宮本というのは日本名で本名は朴という朝鮮名を持っているのですが、美亜は出会ってすぐから彼に運命的な想いを感じます。彼女の言葉を借りると「この男と私は、似ている・・」という感覚。朴さんは中年の坂をゆうに過ぎているのだけれど、かたや美亜は26歳。ただ、どこか心に空虚を抱えた二人は苦しいくらいに惹かれあい、求めあいます。でも決して性的な関係ではないのです。朴さんに温かく、柔らかく抱きしめられることで、美亜はあまり幸せでなかった子どもの頃を思い出し、傷を語り癒します。まるで子猫が甘えるようなしぐさは読み手にも痛みを感じさせました。
しかしながら幸せな時間は長続きせず、朴さんの背負った過去の傷が二人を引き離すことになるのです。この辺まで来るともう涙が頬を伝いはじめました。どこにも日常がなく、ところどころ歪みさえ感じるような関係なのに、なのに深い深い愛を感じます。恋愛をするには似すぎている人間ってこういうことなんですね、きっと恋愛をするには凸凹がぴったりはまりあうくらいがいいんでしょう、同じヒトガタ同士が愛し合うのは見ていて痛すぎます。
最後のシーンが救いなのかどうか私にはわかりませんが、この痛すぎる愛は、幾度となく読み直したくなる素敵な小説であることは間違いありません。ちょっと辛口ですけれども、ぜひとも読んで欲しい一冊です。
*短編集になっているため、表題作の他【約束】【遮断機】が収録されています。 |
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【楽天ブックススタッフ 瑞】 |
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