上巻からの続き・・・(ネタバレを含みますので、未読の方お気をつけ下さい)
はてさて、ホリーとのすれ違いの中でジョーダン・テン・エイク(主人公ジャック・デュラニー)はラジオのドラマ作家としての成功を収めはじめます。突如ひらめきがあったというよりは、どこか神懸かり的な彼の成功への階段は「ちょっと安直なんじゃないの〜」と突っ込みを入れたくなるくらい劇的な展開です。でも、なぜだか心をつかまれてしまったのは、ラジオという文化とこのラジオ局を愛する俳優やスタッフたちの熱気が伝わってきたからなのかもしれません。
ジョーダンの成功が光の部分であるならば、デュラニーとして失踪者や殺人者を追う場面は影の部分です。現実にデュラニーは脱獄を試みた大胆な罪人なわけなので、過去の部分にまで光が当たるのは非常にまずいことなのです。後ろめたい成功は長続きせず、圧迫感が読み手にも迫ってきました。主要な登場人物に総じて横たわっている影と過去が緊張感を与えていました。しかし何よりも圧巻だったのは、戦争ということに対する作者の強い意志が物語の端々(というよりは全編に渡って)描かれていたことです。軽いエンターテイメント小説だと思って読み始めた私にとってはそれは衝撃でした。特にラジオドラマや登場人物の口から語られている人間の残酷さは物語中で起こる殺人事件以上に哀しみを誘います。
上巻の時にも書きましたが、かなり読み応えがあります。社会情勢と個人の犯罪と、過去の事件までもがあまりに入り組んでいるために、途中でなんども登場人物紹介を見かえしました。でもいきなり最後の場面を読んでもさっぱり意味がわからないと思うので、途中であきらめずストーリーを追い続けることをお薦めします。私も挫折しそうになりつつも、気付いたら次第にページをめくるスピードがアップして手に汗を握っていました。読めば必ずラジオ局メンバーと一緒に素晴らしい番組を作りあげた達成感に浸れるはずです! |