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| 2001/11/19 |
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『センセイの鞄』
著 者:川上弘美 出版社:平凡社
発行日:2001/06 本体価格:1,400円
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読み終えて、大きくため息をつきました。息をはくのと同時に言葉のひとつひとつが体に染みこんでくるのを感じられるような空気を持った物語です。
今更あらすじを説明するまでもないほどに話題になった本ですが、一言で言うとセンセイとツキコさんのあわあわと色濃い日々の物語が綴られています。センセイというのはツキコさんの高校時代の国語の先生で、ツキコさんとは30歳ほど歳が離れています。ある行きつけの居酒屋で再会した(といっても、決して真面目な生徒でなかったツキコさんにはセンセイの記憶はあんまりなかったのだけど)2人は妙に意気投合してキノコ狩りに行ったり、市(いち)に出向いて買い物をしたり、同じ時を過ごすようになります。
センセイには実は出ていってしまった奥さんがいて(息子もいる)、亡くなった今もその妻のことを忘れることが出来ません。むろんめそめそした思い出し方ではないのですが、それを見ていると何だかツキコさんの心持ちはざわざわするのです。逆に、もうすぐ40だけど独身のツキコさんにも昔の同級生からの熱心なアプローチがあったりもします。それを知ったセンセイもちょっとこだわりを見せてみたり、2人の関係はちょっとずつ恋情の色が濃くなっていくのです。(この辺のいじましさがなんとも素敵)
こうなると気になる始めるのが老いの影。もう充分歳をとってしまったセンセイは、ずっとずっとはツキコさんと一緒にいてあげられないと悩みます。お互い大好きなのになんだかちょっとした心のすれ違いを演出したりするなかで「恋愛を前提としたお付き合いをしていただけませんか」という名ぜりふが出てくるわけです。人を好きになる事ってこういうことなのかとやわらかな気持ちを覚えるのと同時に、いくらしっかりつかんでいても手の中からさらさらこぼれ落ちていくものを愛おしく思うことの切なさを感じます。とっても緩やかで誠実ででもどこか艶やかな色を持った不思議な世界でした。
最後のシーンではやっぱり涙。個人的には2001年のベスト5に入れたい小説です。 |
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【楽天ブックススタッフ 瑞】 |
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