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| 2001/11/13 |
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『パイロットフィッシュ』
著 者:大崎善生 出版社:角川書店
発行日:2001/10 本体価格:1,400円
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以前『将棋の子』の回の時に「とにかく楽しみです・・」とコメントしておいた新刊『パイロットフィッシュ』をようやく読むことが出来ました。まさしく待ちに待った読書!感激でした。11月号の『本の雑誌』の新刊めったくたガイドの中で吉田伸子さんがこの本を評して「秋刀魚のようにほろ苦い」とおっしゃっています。読んでみてわかりましたが、ほろ苦くて静かなトーンが本当に秋の空にマッチします。(たまたまこれを読んだ日は目の醒めるような快晴だったんです)でも、出来れば太陽の下よりは静かな夜空が似合うかなぁ・・・
ある日の夜中かかってきた一本の電話は、19年前に付き合っていた彼女からのものでした。「わかる?」という一言で「あぁ、わかるよ」と答える主人公の山崎。あいだに横たわる時間を埋めるように話し始めた話題は熱帯魚の話でした(パイロットフィッシュとはなんぞや?と思った人はこれを読んでください、熱帯魚の生態にも詳しくなれます)2人の会話の後ろにはコポコポコポという水槽の音が聞こえてきそうな静けさがなんともいえません。(あくまでイメージです)
「人は、一度巡りあった人と二度と別れることはできない。」という言葉が表すのは、人間には記憶があるから記憶からは離れられないという事。19年前の彼女由希子に代表されるように、主人公の心の中を通り過ぎてきた色々な人たちとのドラマがこのメインの物語です。由希子に背を押されるようにして入ったエロ雑誌の編集部の人々、大学時代楽しい日々を過ごしていた仲間、高校時代からの友達、雑誌の編集過程で知り合った風俗嬢との魂のふれあいや彼女を介して知り合った19歳若い彼女、七海。
交わり通り過ぎて行った人々が彼をつくっていったのだなと、想いはじわーっと広がります。恋愛小説としても青春小説としても読めますが、総じてひとのけなげさや懸命さを強く感じる小説でした。たとえ率直な想いを抱いて過ごしていても相手に伝わらない事ってあるんですよね、それが時というフィルターを通すだけでちょっとほろ苦く蘇ってくる、離れてみてから相手と気持ちが通じることもあるんです。この切なさはぜひとも読んでみて体感してください。
大崎さんの初の小説は大満足の出来でした(贔屓目も入っていますが)。ちょっと気が早いかもしれませんが、次作も楽しみです。 |
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【楽天ブックススタッフ 瑞】 |
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