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| 2001/10/9 |
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『かずら野』
著 者:乙川優三郎 出版社:幻冬舎
発行日:2001/08 本体価格:1,500円
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「一生の奉公」に出された娘、菊子の数奇な運命を描いた小説。非常に若くして奉公に出された菊子は、なぜか綺麗な部屋をあてがわれ、綺麗な着物を作ってもらい他の奉公人とは一線を画した生活を送ることになります。むろん疑問は抱くのですがその答が出たのは主人に体を奪われた時でした。いろいろ事件があって、そのまま彼女は若旦那と逃亡生活を始めることになります。
この若旦那というオトコがどうしようもないヤツで、金は盗むわ、儲けた金はスッちゃうわ借りた金を返さず逃げちゃうわ本当に読んでいるこっちが不愉快になるくらいです。大体、乙川作品を読みたいときというのは癒しを求めていたり、しみじみ深〜い気持ちになりたかったりする時なのでそんな私の気持ちをがらがらとかき混ぜてくれました。よりによって菊子には何度も救いの手が差し伸べられるのに、それを幾度となく振り切ります。これでもかこれでもかと寄ってくる悲劇の数々には「半分は自業自得では」と思わずにはいられません。
しかしながら、私はこの小説を夢中で読みすすみました。菊子が富治(若旦那)と離れられない理由はやっぱり愛なのか?単なる母性本能なのか?それとも犯罪の片棒をかついだような後ろめたさなのか?読み切ったところで答が出たわけではないのですが、しみじみと考えさせられています。
逃げ回る菊子に幾度と救いの手を差し伸べる幼なじみの存在があります。彼は佐久間象山と行動を共にし事あるごとに近代を説くのですが、菊子たちのように体当たりで生活する人々の表情やしぐさと比べると非常に空虚なものに聞こえてくるのです。それくらい描かれた自然のダイナミックさと民衆の息づかいが印象的でした。流れされていく夫婦の背景にある景色が本当に雄大です。またタイトルにもなっている“かずら野”の描写とそこでの夫婦のやりとりにはちょっと目頭を熱くしました。
途中で頭にきてもぜひとも最後まで読んでください。最終シーンで一気に印象がかわるはずです。 |
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【楽天ブックススタッフ 瑞】 |
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