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| 2001/10/30 |
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『玉蘭』
著 者:桐野夏生 出版社:朝日新聞社
発行日:2001/03 本体価格:1,800円
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「桐野夏生という人はこういう小説も書くんだ・・」というのが一番目の感想です。『OUT』や『柔らかな頬』。そしてミロのシリーズとも、強く生きようと願う女性があがくような所を感じたのですが、この話では非常に顕著にそれを受けます。また、愛を求めて壊れていくさまは怖いくらいにリアルでした。彼女の書く女性っていつもどこか自虐的で、最後まで読み終わったときに口苦さが残るんですよね・・・でも、これは非常に幻想的な恋愛小説で、噛めば噛むほど印象がかわってきます。
編集者の有子は仕事と恋、キャリアを捨てて上海に留学します。不眠症で悩み、日本以上に狭い留学生社会の人間関係に悩む彼女に会いに来たのは大叔父の質(ただし)でした。もともと彼女も突如歴史から姿を消した彼の足跡をたどって上海に渡ったこともあり、二人の奇妙な交歓が始まります。時は70年ほど遡りますが、質本人も戦時下の上海で浪子という女性を強く愛した過去があったのです。鬱陶しい人間関係を警戒しつつも、いつのまにか有子は奇妙な男女関係の中に身を落とし、愛を追い求める登場人物たちは時空と距離を超えて交差していくのでありました。
理解し合う事の出来なかった男女が、何年もかかって愛を追い求め知っていく。テーマはとても幻想的なのですが、書かれる人物は何だかとっても等身大。だからこそ痛いくらいに読み手に迫ってきます。恋人に裏切られてもどこかで忘れきることの出来ない女性、逃げても追ってくる幻。なげやりで切ないくらいの性描写。読んでいるうちに気持ちがヒリヒリしてきました。
恋愛小説であると同時に、時代小説としても読めるかもしれません。日本を離れ大陸に生きることを求めた人達が何を感じ、何を喜びにしていたのか?肺病の恐怖におびえ、埋め合わせのように肉欲におぼれるところなどがまるで目の前にあるように展開します。さすが桐野さん、ずしんと心にのしかかる小説を書いてくれました。女性陣の価値観が壊れていくのをみていると何だか人ごとではない気がします。
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【楽天ブックススタッフ 瑞】 |
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