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| 2001/1/25 |
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『二人のガスコン(上)』
著 者:佐藤賢一 出版社:講談社
発行日:2001/01 本体価格:1,800円
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どうせだったら、全3巻出揃ったところで読めばストレスなく楽しめるのに・・・。ためらいも多少ありましたが、上中下、の上巻だけでもいち早く読みたいと、はやる気持ちを抑えらないのは、この作品は絶対面白いはず、という確実な予感によるもの。武人、剣客、無頼漢、およそ侠気に富んだ人物を描かせたら、佐藤賢一作品がどんなに面白いかってことは『傭兵ピエール』や『双頭の鷲』でも周知のこと。豪放、快濶、磊落な登場人物たちの心意気に胸おどらせ、垣間見せる一抹の気弱さにはシンパシーを。豊かな表現で描き出された人物像の魅力にぐいぐい引き寄せられ、そのサービス精神旺盛なストーリー展開に手に汗を握る。面白さのツボを押さえた手練手管に、毎度、甘んじて手玉に乗せられて、ひとときのトリップを楽しむ。佐藤賢一作品は、まさに、われを忘れて楽しめる娯楽歴史小説の白眉なのです。さらに、今回の主役は、フランス文学史上の二大人気登場人物、ダルタニャンとシラノ・ド・ベルジュラックというのだから、あの佐藤賢一がどう描くのかと考えただけでも期待感倍増。そして読了。はやく続きが読みたい!(いや、わかっていたんだけれど後悔したりして)。
今上ルイ十四世は未だ八歳の少年王。先王の時代には華やかな活躍をした銃士隊も今はなく、蛮勇の時代も終焉を迎えた。盟友「三銃士」たちと別れ、一人、マザラン枢機卿に仕えるダルタニャンは、処世と保身に生き、かつての熱い血潮を失いつつあった。一方、軍を退役して、今は売れない作家の身の上となったシラノ・ドゥ・ベルジュラック。彼もまた、わずかな金銭のためにマゼランから依頼された仕事を引き受けることとなる。勇猛にして果敢、猪突猛進、熱血をもって知られるガスコーニュ人(ガスコン)気質を色濃く受け継ぐ名高い二人。当初は互いに反目しながらも、少しずつお互いを理解しはじめる(ここですね、ツボは。果たしてパートナーシップは芽生えるのか)。マザランに与えられた密命を遂行するうち、その背後にうごめく大きな陰謀に、二人の熱い血が蘇っていく・・・のですが、続きます(笑)。
無双の剣客が二人。矛盾したフレーズですが、この二人の「ガスコン」なら納得というもの。両者のモデルとなった人物は、ともに17世紀前葉に生きた同時代人です。とはいえ、この作品は大デュマの『ダルタニャン物語』、とロスタンの『シラノ・ド・ベルジュラック』という19世紀に創出された傑作文学のキャラクターと借景から創り出された物語と言えるでしょう。哲学者にして音楽家、剣客にして詩人、怖いもの知らずの猛き武人にして、繊細な文人。その巨大な鼻のために、己の容貌を卑下して、憧れの女性に恋心をうちあけることができず、恋敵の恋愛の成就に手を貸したシラノ。あのペーソス溢れるキャラクターが、再び息を吹き込まれ、縦横無尽の活躍を演じます。ダルタニャンについては、是非、楽天ブックス、トップページから『ダルタニャン物語』の特集をご覧ください。三巻出揃うまでお待ちの方は、その間に予習を、是非。
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【楽天ブックススタッフ 知】 |
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