タイトルは『伝書鳩』ですが、「もうひとつのIT」というイカした副題が効いています。モバイルも携帯電話もない時代、新聞記者たちが辺鄙な土地に取材に行く際には、数羽の鳩を籠に入れて連れていき、撮影済みのフィルムを託して大空に放っていた・・・かつてのスクープがこうした「鳩便」によって支えられていたという事実。戦後、有楽町界隈に新聞社社屋が集中していたことから、ひょっとすると、現在、日比谷公園にいる多くの鳩たちは、この「ジャーナリスト鳩」たちの末裔なのではないか、との興味深い論考を紹介しながらスタートします。その昔、情報通信の一翼を担っていた「伝書鳩」という伝達手段について書かれた驚きに満ちたレポート。愛鳩家ならずとも楽しめる一冊です。
空に放った鳩がオリーブの枝をくわえて戻ってきたことで、洪水の終わりを知ったノア。聖書中の記述に始まり、マリーアントアネットの幽閉時の連絡手段として、ロスチャイルド家の情報戦略として、歴史の影で活用されてきた「鳩」のエピソード。ある時は軍事目的で情報戦を闘い、ある時は新聞・通信社の使いとしてジャーナリズムを支え、その特殊な識別能力から心理学の研究にも用いられた「鳩」と人間のさまざまな関わり。1994年にスイス軍の伝書鳩部隊が廃止されて以降、世界に軍事目的で養われている鳩はいなくなったそうですが、すべての電信手段が崩壊する暗黒の世界がやってきた時、ふたたび伝書鳩便がその機動力を発揮することがあるのか、いや、ない方が良いですね。
子どもの頃、レース鳩の漫画を読んだなあ、というおぼろげな記憶があったのですが、この本でも言及されておりました。『レース鳩アラシ0777』。これ以降、レース鳩をテーマにした漫画は書かれていないとのことですが、残念ながら絶版のようですね。 |