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| 2003/7/25 |
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『やまない雨はない』
著 者:倉嶋厚 出版社:文藝春秋
発行日:2002年08月 本体価格:1,300円
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「続ける」ということは、それだけで貴いことなのだと、そう思ったことがあります。やめる勇気がなくて続けているケースっていうのも中にはありますが、それはさておき、続けるのが辛いときは、やめる理由なら、いくらでも作ることができます。こうだから、ああだから、だからもうやめよう。いや、「やめよう」ならまだ積極的。より正確には「もういいや。続けなくても」。内輪話で恐縮ですが、この「読書日記」は、楽天ブックスのスタートの2001年1月1日から始まり、やっと600回に達しました。続けるにはそれなりに苦労もありましたが、「これだけは絶対」という適度なストレスを自分にかけ続ける心地よさも一方で感じていました。
「続ける」と言えば、人生そのもの、これを何十年も続けているのも、とんでもなく気の遠くなることです。NHKで天気予報をされていた倉嶋厚さんが、その人生を自分で終わらせようと思っていたなんて、私はこの本を読むまで全然知りませんでした。
奥様の泰子さんとは、1+1の足し算ではなく1×1の掛け算だったと語るほど、同じ思いで暮らしてこられたのでした。倉嶋さんの自己実現を我が事として喜んで支えてくれた奥様を、入院からわずか24日という短い間で失ってしまいます。掛け算は、一人が0ならすべてが0。「ああしてやればよかった。こうもできたんではないだろうか」という自責の念に駆られ、心がぼろぼろになり、飛び降りようとマンションの屋上に立つ毎日。そしてある日、ついに跳び、――その場に着地したのでした。
死を受け入れるには時間が必要だったのでしょう。苦しみながらも、やがて立ち直っていきます。時間に加え、支えてくれるまわりの人の力もありました。「伴侶の死」というテーマで募集していた雑誌に手記を投稿したときに、選者の平岩弓枝さんがコメントをくださったそうです。「手記を拝見して仰天しました。どうぞ思い出してください。私だけではありません。倉嶋さんの天気予報で元気になった人が日本全国どれほどの数であることか。決してお忘れにならないで頂きたいのです」。この言葉に強く励まされた倉嶋さんでした。私自身も、胸に迫るものを何度読み返しても感じます。人に必要とされるのは、とてもありがたいことなのです。それこそが、生きていられる理由かもしれません。
天気予報の倉嶋さんらしいのはタイトルもそうですが、「人生の小春日和」と例えていらっしゃるのが印象的でした。厳しい冬を迎える前にふと訪れる穏やかな暖かい日和。倉嶋さんのお人柄を表しているようです。そんな穏やかさ、そして何より、奥様への深い愛情がにじみ出ていた文章でした。生き続けてよかったですね、倉嶋さん。
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【楽天スタッフ 笑】 |
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